ただ“日にち薬”とはよく言ったもので、1年、2年と月日が経つうちに悲しみも癒え、“いい縁があれば恋愛もしたいし、結婚もしたい”と思うようになった。
友人たちに誘われれば、飲み会やバーベキューにも参加するようになり、そこで女性を紹介されて、お互いに気が合えば連絡先を交換し、食事にも出掛けるようになった。しかし、そこから恋人同士の関係に発展する人はいなかった。
「“成り行きに任せていればなんとかなるだろう”と思っていたけど、気がつけば37歳になっていました。40歳という年齢が見えてきた時に、その考えが甘かったことに気づいたんです。20代や30代前半で結婚をしている友人たちを見ていると、もっと早い段階で立ち上がっている。逆算すると、4、5年前に結婚を真剣に考える相手を見つけているし、その相手を見つけるためにいろいろな行動を起こしていたんです」
結婚相談所で、相次ぐドタキャン
結婚相手を見つけるには、“結婚したい”という気持ちがある人に出会ったほうが早い。そう思った裕紀は、37歳の時に、結婚情報センターに入会した。そして先に記したように、結婚を決めた相手から結婚を破棄され、私のところにやってきたのだ。
実は私のところでも、1度結婚を破談にされている。活動を始めてから1カ月足らずで “真剣交際”に入る女性が現れ、3カ月後にはプロポーズまでこぎつけたのだが、1週間後、「やっぱり結婚は考え直したい」と相手が言ってきたのだ。相次ぐドタキャン。
その直後に事務所にやってきた裕紀は、ソファーに腰を下ろすなり力なく言った。「どうしていつもこうなっちゃうんだろう。そういう運命なんですかね。自分のどこがいけないんだろう。本当に結婚できるんですかね」。
がっくりと肩を落としている裕紀に、私は思いきり笑顔を作り元気よく言い放った。「弱音吐いてんじゃないよっ! 次行くよ、次!!」。
そう言いながらも、彼がどのくらい傷ついているかは十分に知っていたし、心が痛かった。だから、裕紀には絶対に幸せな結婚をしてほしかったのだ。
仲人は“絶対”という言葉を会員の前で使ってはいけないといわれている。なぜなら人との出会いは、“縁”であり、絶対に結婚相手に出会えるとは限らないからだ。また、結婚は、“選ぶこと”と“選ばれること”がイコールになったときに成立するものであり、こちらが「結婚したい」と相手を選んでも、相手から選ばれなければ結婚には至らないからだ。
それだけに、今の婚約者に出会い、“プロポーズをして受けてもらった”という報告を受けた時には、うれしかった反面、“もうどんでん返しがありませんように”と心の中で願っていた。
どんでん返しはなかったものの、“入籍は1年後”という話を聞いた時には、“彼女を信じて1年を費やして大丈夫なのだろうか”と正直なところ心配になった。
ゴールデンウイークの吉日、裕紀からメールが来た。
「先日両家のあいさつも終えて、今日、入籍しました。結婚式はしないけれど、ドレスとタキシードの写真だけは撮ろうと思っています」
「やったー! 結婚おめでとう。ついに、ついに、ついに入籍だね!! 幸せになろう~」
私もすぐに返信をした。
先日、久しぶりに裕紀が事務所に遊びに来てくれた。その時に、こんなことを言っていたのが印象的だった。
「“相手のすべてを好き”って言えるのは、結婚して最初のうちだけなんじゃないかな。長年一緒にいれば、好きなところもあれば嫌いなところもでてくる。でも、それをてんびんにかけた時に、好きなところが勝っていたら側にいたいって思う。
この間彼女が、『あなたはマイペースな人だけれど、そのマイペースさが嫌じゃない』っていったんですよ。こっちとしては、『おいおいおい、マイペースなのはそっちだろ!』って突っ込みたくなった(笑)。けど、お互いにそれを認め合えるから、一緒にいるんだと思うんですよね」
いいこと言うなぁ〜。相手のすべてが好きじゃなくてもいい。でも、ずっと変わらずお互いを思い続けていってほしい。
裕紀、おめでとう!
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