韓国文政権誕生で、米韓関係に訪れた「転機」 北朝鮮政策の違いをどう乗り越えるか
安全保障同盟の維持を公約する一方で、文大統領は、韓国の独自防衛能力、とりわけミサイル防衛の分野の強化を模索している。最後に、彼は大日本帝国によって性的サービスに従事させられた韓国の女性たち、いわゆる「従軍慰安婦」に対する補償と謝罪に関する戦時歴史問題を解決するために2015年に日本との間で結ばれた合意に反対している。
文大統領は、4月23日に発表した声明の中で、北朝鮮に対する自身のアプローチについて概要を説明し、「今日の危機を乗り越えるための大胆な青写真」を提唱した。彼は北朝鮮との6カ国協議再開を支持し、核兵器のない朝鮮半島を構築するための「相互軍縮合意」の段階的交渉を目指している。米『タイム』誌とのインタビューの中で文大統領は、段階的なアプローチは、さらなる核実験の凍結を皮切りに始められると示唆した。
これらの交渉は、もともとの太陽政策の根底的な考え方である、国内変革のプロセス促進を目的とした、北朝鮮との経済的つながりの幅広い再開とセットになっている。韓国の革新派は、自分たちはただ単純に過去に戻ることはできず、北朝鮮の核兵器やミサイル発射システムが進歩を遂げる中、単に関与するだけで関係性が改善するとは考えていない。しかしそれでも彼らは、このような関与が衝突を回避するには不可欠なのだという考え方に傾倒している。
文大統領の政策綱領は、太陽政策の別の特徴でもある離散家族の定期的な集まりや、韓国のNGO団体による北での人道支援の再開を許可することを提唱している。そしてこの政策案は、南北協力合意の制定を訴えている。考えられる最初のステップとしては、5万人の北朝鮮労働者が韓国企業に雇用されていながらも、現在閉鎖されている開城工業団地の再開があるかもしれない。文大統領は、こうした先に、2つの朝鮮国の「経済統一」の目標を掲げている。
「脇役」になることに不快感
この青写真は、対北朝鮮経済制裁を強化し、北朝鮮政府への資金の流れを止める現在の政策に逆行するものである。また文大統領は、米政府と緊密に連携する意思を抜かりなく強調してはいるものの、中国による北朝鮮政策の変更に頼る現在の米国のアプローチにも懐疑的だ。多くの韓国人と同様、文大統領や彼の顧問は、朝鮮半島の問題に関して、中国に依存することを懸念しており、事実上韓国を通さないいかなるアプローチにも強くくぎを刺している。
「脇役となって、米中間の議論や米朝間での対話を見守るのは、韓国にとって望ましいことだとは思わない」と、文大統領は米ワシントンポスト紙に語っている。
「韓国が主導権を発揮することは、最終的には米国との2国間同盟を強化することになると私は信じている。しかし、『主導権を発揮する』と私が言うとき、韓国が米国に事前に十分相談することなく北朝鮮にアプローチしたり、一方的に対話の扉を開いたりすることになるという意味で言っているのではない」
韓国の指導力を行使したいというこの願望は、文大統領の防衛政策に反映されている。同大統領は、米国による戦域高高度防衛ミサイル (THAAD) 発射台の配備に対し、選挙前に最初の発射台を前倒しで配備することを含めて、反対してきた。
さらに最近では、THAAD配備の議論を再開する可能性を示唆し続けながらも、この立場からは一歩後退した。長い目で見れば、文大統領や革新派は、米国や日本のミサイル防衛構造とは関係のないこの国独自の韓国型ミサイル防衛システムや、韓国の弾道ミサイルを使った先制攻撃システムの構築を支持するだろう。
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