中国でプーアル茶バブルが起きる原因はいくつかある。シャドーバンキング(影の銀行)問題でも騒がれている過剰流動性による余剰資金の流入、長期保存に適していて商品化されやすいプーアル茶の特性、そして、何かと「古いもの」をありがたがる昨今の中国の風潮などが深くかかわっている。
今やプーアル茶は、中国ですっかり高級ブランド化し、北京や上海の高官や企業家の間で贈答品に使われることも多い。もともとは低中級茶の位置づけで、香港や広東など「飲茶」(ヤムチャ)習慣のある地域で愛飲されてきたが、上海以北ではほとんど買うことすらできなかった。
私は、1990年代に香港で暮らしたときにすっかりプーアル茶のファンになったのだが、その頃は北京のレストランで「プーアル」と頼むと、店員からバカにするような目で見られたものだ。しかし、2000年以降は逆に高級レストランで真っ先に勧められるのがプーアル茶になった。
チューリップバブルとの比較
プーアル茶は漢字で普洱茶と書く。雲南種の普洱県とその周辺が主要産地であるためだ。円盤のような形状で茶店に売られているのを見かけたこともあるかもしれない。内陸部の雲南で採れたお茶を遠い沿岸部の消費地に効率よく送るために、茶葉を圧縮して発酵させる独特の製法で作られている。
茶種としては、緑茶や紅茶、青茶(ウーロン茶)ではなく、黒茶と言われる部類に入る。圧縮・発酵の最中に茶葉がツヤのある黒色に変わるからだ。
長期間の保存がきき、時間が経つほど味がよくなるとされる。30年ものや50年ものなどのプレミアムを生み出すことから、2000年以降に突然、投資家のターゲットとなった。雲南省の山奥に買い付けが殺到し、茶樹の段階から買い取りが決まっていった。2007年には50年もので100グラム当たり数百万円という常識ではありえない価格で取引され、プーアル茶バブルと呼ばれた。
当時、中国では17世紀のオランダのチューリップ相場の高騰と比較する議論も盛んだった。チューリップバブルの際は、球根1個で家が買えたとされる。プーアル茶もたかがお茶なのに、貴金属並みの値段に吊り上げられたのだ。
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