基本的に失業率が下がることは経済にとって悪い話ではありませんが、アメリカでは労働力不足という話が現実のものとなっており、このあたりを誤るととんでもないことになるのです。
先日シアトルに行っておりましたが、あらゆる業種で優秀な労働力はすでに不足しており、IT関連産業の活発なシアトルでは、メキシコを筆頭に、東欧、インドから来た労働者がそれを補っている状況です。
西海岸、ボストンなどの東海岸でも押しなべて同じ状況で、むしろ外国人労働者のさらなる増加が必要だ、という経営者は多いのです。その点でトランプ大統領は全く現状認識ができていない、というのが実情でしょう。要するに今の新しい産業に適応する人材になっていない、昔ながらの白人労働者というのが密集している中西部がアメリカの問題なのであって、彼らが新しい産業に適合する努力をしない限り、この問題は解決しません。
このままだとアメリカ企業は海外に出て行くしかない
その意味ではオバマ前大統領がやろうとしていた、コミュニティーカレッジの無償化というのは実に理にかなった方法で、トランプ大統領もこの路線は維持すべきと考えます。
いずれにせよ、その意味で、この先は失業率が下がったとか、雇用が増えた、という一面的な見方をするとアメリカ経済の先行きを見誤る恐れがあります。
十分な労働力が国内で確保できない、となれば企業はそれを確保できる海外に移転するしかないわけで、トランプ大統領が考えていることとは真逆のことが起こります。それを「海外に出ていく企業には課税強化だ」、などと言っていたらアメリカ経済の足を引っ張ることになり、まさに本末転倒、というのはこのことです。
この大統領の指導力、本当に心配になってきました。このまま物事が進んでいくならばトランプリスクをどこまで織り込めばいいのか、市場も疑心暗鬼になっていくことになります。
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