個人投資家の「好ましい」インフレ率は? 日本銀行が掲げる2%は定着しているのか

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調査で分かったこと<その2>  2%インフレよりも1%のほうがベター

今回の調査における特徴は0%、プラス1%、プラス2%のそれぞれのインフレ率について、個人の選好を調査したことである。

これらの回答分布について、「好ましい」という回答は「自分の家計にとって」は「0%>1%>2%」という順番で回答比率が高く、「日本経済にとって」は「1%>2%>0%」という順番で回答比率が高かった。ここで分かることは、「自分の家計にとって」も「日本経済にとって」も「1%>2%」となったということである。総合的に考えてインフレ率はプラス2%よりもプラス1%のほうが好ましいと考えている個人が多いということである。

一般の人々の物価に対する見方を調査するものとしては、日銀の『生活意識に関するアンケート調査』がある。この調査では1年前と比べて物価が「上がった」もしくは「下がった」と回答した人に対して、それぞれ好ましいかどうかを継続的にまとめている。2017年3月調査では、1年前と比べて物価が「上がった」と答えた人にその感想を聞くと、約8割の人が「どちらかと言えば、困ったことだ」と回答した。ここでも物価上昇に対して否定的な人が多いことが示されているが、回答者がどの程度の物価上昇をイメージして答えているかについてはわからず、「1%のインフレは好ましいが、2%を超えると困る」というような微妙なニュアンスまでは測ることができなかった。

今回の調査では、「自分の家計にとって」と「日本経済にとって」はどちらが重要なのか、という問題はあるものの、いずれにしても「1%のほうが2%よりも好ましい」と考えられていることが明らかとなった。日銀が目指すプラス2%のインフレ目標の正当性は個人に理解されていないとみられる。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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