メイ首相の判断はこれと対照的だ。首相によれば、EU離脱交渉をめぐる議会内の批判の声に押される形で解散総選挙を決めたという。国益を代表して交渉するには、国民からの強い信任が必要というのだ。
だが実際には、メイ首相を妨げるものは身内の保守党を除いて、ほとんどない。保守党はEU離脱をめぐり強硬派と穏健派に分裂しているが、選挙で圧勝すれば、メイ首相は党内の抵抗勢力を屈服させられるだろう。
対決しようとしているのは強硬派か穏健派か
問題は、首相がどちらと対決しようとしているかだ。交渉決裂も辞さないハードブレグジットの強硬派か、妥協を行いつつも英国の経済的な利益を守ろうとする穏健派か。メイ首相が対決しようとしているのはどちらなのか。
真相は誰にもわからない。首相は手の内を明かそうとしないし、政府も木で鼻をくくったようなことしか言わない。だが、英国がEU加盟国として現在享受しているのと同等のメリットを今後も享受できると思ったら、大間違いだ。
英国は国内で独り善がりな政治的議論を行っているが、いずれ現実に直面することになる。6月の総選挙の結果、メイ首相に対する信任がどれだけ高まろうとも、EU離脱の過程で27のEU加盟国との交渉を迫られるのは動かぬ事実だ。それぞれの加盟国には英国同様、それぞれの政治的思惑がある。
メイ政権は選挙での圧勝をテコに、離脱交渉でフリーハンドを得る考えだとみられている。メイ政権が議会で圧倒的な多数派を形成し、何でもありの状態を作り上げることを望んでいるのは明らかだ。そうなれば、EUとの交渉結果がどう転ぼうが、痛くもかゆくもない、ということだろう。
だが、私はまったくもって、そうは思わない。6月の総選挙でメイ首相がどのような信任を得ようとも、EUとの交渉結果が思わしくなかったり、決裂するようなことでもあれば、英国経済はもちろんメイ首相とその政権は必ずや荒波にのまれることになるだろう。
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