韓国で日本の「納豆」がブームになった理由 市場規模は直近の10年間で「10倍」に拡大
その後、韓国に訪れた健康ブームに乗り、テレビの健康番組で取り上げられるなどして、認知度が高まったことが追い風となった。当初は、健康を気にする50~60代に人気があったが、最近では若年層にも支持が広がっているという。こうした納豆人気の盛り上がりをビジネスチャンスと見て、いくつかの食品メーカーも納豆市場に参入しているが、「やはり、元祖は強い。プルムウォンが市場の80%強を占めている」(韓国の経済誌記者)という。
韓国納豆市場のパイオニアである同社は、近年、顧客の裾野を広げようと、さまざまな納豆を売り出している。たとえば、「黒豆納豆」や柚子ソースで食べる「柚子納豆」、黒酢ソースと合わせる「黒酢納豆」などだ。
それぞれ食べ比べてみると、黒豆は硬い食感以外は一般の納豆とあまり変わらず、柚子ソースは少し甘みがあるのが納豆によく合い、トーストに塗ってもおいしい。黒酢はイタリアのバルサミコ酢にも似ていて、さっぱりとした後味だ。価格は、日本と比べると高めで、どの種類の納豆も2個入り1パックで4500ウォン(約440円)だ。
納豆に似た韓国の大豆発酵食品「チョングッチャン」
実は、韓国にはもともと納豆に似た発酵食品がある。清麹醤(チョングッチャン)といい、大豆を発酵させた味噌の一種で、蒸した大豆に枯草菌を入れて発酵させたものだ。納豆との違いはというと、納豆が枯草菌の中の納豆菌のみを使うのに対し、清麹醤はさまざまな種類の枯草菌が入っている点にある。さらに、納豆の材料には大豆のみが使われるが、清麹醤は保存性を高めるために、塩や唐辛子、おろしニンニクなどが加えられている。見た目は味噌(みそ)と変わらないが、味噌よりも大豆一粒一粒がそのまま残っていて、大豆の存在感がある。
この清麹醤がいつ頃から食卓に上るようになったかは定かではないそうで、伝えられているところによると、高句麗時代に満州地方の騎馬民族が馬の鞍の下にゆでた豆を入れて、移動しながら食べていた際に、馬の体温により豆が自然発酵したのが始まりだという。また、名前の由来にもいくつかの説がある。中国の「清」から伝わったため、同じくチョングッチャンと発音する「清国醤」となったという説や戦時中に簡単に作ることができたために、こちらも同じ発音の「戦国醤」と呼ばれたという説がある。今は、主に「清麹醤」という名称が使われている。
清麹醤は、ゆでた大豆をわらやザルに載せて、セ氏40~45度の温かい場所で2、3日発酵させた後、好みで塩やすりおろしたニンニク、唐辛子を入れて、さらに寝かせた後に豆腐や肉、タマネギなどの食材と一緒にチゲにして食べるのが一般的だ。整腸作用があるほか、心筋梗塞や脳卒中への予防にもよいといわれ、2000年代に入って韓国を席巻した体や精神面でよい状態を目指す「ウエルビーイング」ブームのときには、おいしいと評判の清麹醤店には行列ができる盛り上がりだった。清麹醤も納豆のように、塩分控えめなものなどが販売されている。
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