マツダ「ロードスターRF」乗ってわかった実力 最新スポーツカーはこんなにも快適で楽しい

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赤のロードスターは相当目立つ

マツダによれば、ロードスターRFは月間目標に対して発売1カ月の受注台数は約10倍という好スタートを切った。MT車とAT車の比率は半々ぐらいだという。ベースのロードスターのMT車:AT車比率が7:3なのに対してややゆったり乗りたいというユーザーが少なくないようだ。年代別の顧客分布はピークのロードスターが40代が3割でピークなのに対し、ロードスターRFは50代が3割と顧客の年齢層も高めだ。

というのも、価格的に見て収入や貯蓄の少ない若い人にはなかなか手が出せない。ロードスターRFの車両本体価格はもっともお手頃の仕様でも324万円。最上級グレードだと373万円台。ベースのロードスターと70万円程度の価格差があり、税金や諸費用を入れると400万円を軽く超えてしまう。しかも2人乗りなので、子育て世代のファーストカーとして買うにはなかなか難しい面がある。収入に相当な余裕のある人がセカンドカーで乗る、ないしは子育てが終わった世代が夫婦の移動をメインにするためのクルマといったところか。

余談だが伊豆からの帰路はソフトトップのロードスターMT仕様に乗って戻って来た。一般道ではもちろんキビキビ。ソフトトップは高速道路で風切り音が少し気になるが、1500ccの小さなエンジンは快調に回り、速さも十分。快適にクルージングできる。運転のしやすさもロードスターRFともちろん同じだ。

ロードスターRFの競合車種に挙げられるのは、BMW「Z4」、トヨタ「86」、ホンダ「S660」などだ。輸入車の高級スポーツモデルを所有したことのある富裕層からすると、「ロードスターRFの価格は安い」と評価する声もあると聞く。

バブル期に若者が憧れた「デートカー」

低い車高に流れるようなデザイン。高い走行性能。昔はスポーツカーといえば若者の憧れだった。全盛はバブル前後で、有名なのはホンダ「プレリュード」(車両型式はBA4/5/7)や日産「シルビア」(S13)。プレリュードは1988年に約5万8000台、シルビアは1989年に約8万1000台を売った。今のスポーツカーでは考えられない数字だ。当時は「デートカー」とも呼ばれ、とくに「女性をデートに誘うために、無理してローンを組んでスポーツカーを買った」という逸話のある現在50代以上の男性も少なくないだろう。

一方、スポーツカーに憧れ、実際に購入にまで至る若者は、どんどん減っていった。1990年代後半以降は、ミニバンやSUV(スポーツ多目的車)など、利便性を優先した車種や経済性に優れたコンパクトカーなどの人気の高まりとともに、スポーツカー市場は縮んでいく。トヨタでは一時期スポーツカーが消滅したときもある。

それが近年はトヨタが「86」「レクサスRC」「レクサスLC」という2ドアクーペを相次ぎ投入。ホンダもかつての「ビート」を彷彿とさせる軽オープンカーの「S660」に続いて、昨年は超高級スポーツカー「NSX」を復活させた。そんな中でもコツコツとオープンスポーツカーのロードスターを続けてきたマツダのこだわりは、確実にコアなファンをつかんでいる。現行4代目ロードスターの販売台数は年間約1万台。日本では2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)を受賞するなど専門家の評価も高い。

車を移動の手段として考えたとき。人はたくさん乗れたほうがいい。広いほうがいい。荷物はたくさん積めたほうがいい。静かなほうがいい。となると、究極的には7~8人乗りのミニバン。あるいは実用性を重視しつつもスタイリッシュに乗るなら5人乗りのワゴン、SUVということになるのかもしれない。

だけどそれらだけがクルマの絶対的な価値でもない。移動する楽しさとかワクワク感に振ったらスポーツカーにはかなわない。かつてデートカーのMT車をうまく走らせられなかった人も、今の最新モデルならきっと運転がうまくなったと感じるはずだ。AT車でゆったり乗るのもカッコいい。こんなクルマをマイカーにできる大人がうらやましい。そんなことを思いつつ、1泊2日という短い夢の時間は終わった。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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