災害時に慌てて仮設住宅を作るのはやめよう 新しい公共空間Pop-up Commonsとは?
野尻:そうなれば再犯率も減るでしょうね。
孫:ええ、もう犯罪は激減したそうです。このコンテナを利用した街づくりが、「Pop-up Commons」の発想のベースにあります。
移動式防災都市「Pop-up Commons」
孫:一方で私は、Mistletoeという会社で、新しいテクノロジーを開発している人たちの起業・スタートアップを支援しています。たとえば、東京大学の博士課程で学んでいる北川力さんたちが創業した「HOTARU」。同社では、「世界中の水不足の問題をなんとかしたい」という思いから、水循環システムを開発しています。4人家族が1カ月間シャワーを使うと1600リットルの水がいるのですが、彼らのシステムを使うと、20リットルの水があれば半永久的にシャワーが使えます。
木下:画期的なシステムじゃないですか。
孫:はい。それから鶴岡マリアさんという20代の女性が立ち上げた「サイマックス」では、乾電池1個で動くセンサーを使って、尿に含まれた十数種類の物質データを測定し、病気の予兆を検知するというシステムを開発しています。
それから島原佑基さんが立ち上げた「エルピクセル」。同社は、目に見えないような微小な悪性腫瘍でも、画像解析ソフトと人工知能を利用して検知するシステムを開発しています。
木下:そうか。先ほど孫さんがおっしゃったような「従来型の病院は30年後には消えてなくなる」という話は、こういうテクノロジーの裏付けがあるから言えることなんですね。
孫:そうなんです。それから、人工知能を搭載し、時速100キロメートルの速度で飛べる自動運転のドローンを開発したアメリカの会社の支援もしています。
こうしたテクノロジーと「Pop-up Commons」のアイデアが結び付くと、これからの災害時の救援や支援のやり方がガラッと変わると思うんですね。
熊本地震のとき、私も個人的に支援したんですが、そのときに気になったのが「避難所暮らし」「仮設住宅暮らし」です。その言葉の響きだけでネガティブな感じになる。
そこで使えるのが、コンテナを利用した移動式防災都市「Pop-up Commons」です。期間限定で開かれるポップアップストアってありますよね。あれと同じように、必要なときに突然現れる、住環境を備えた公共空間をつくったらいいんじゃないかという発想です。
だから「避難所暮らし」「仮設住宅暮らし」ではなく、たとえば「俺、ポップアップコモンズっていうところに住んでいるんだ」と言えるようにならないかなと。
野尻:いいですね。響きもいい。
孫:そこにさっきの水循環システムがあると、水道管がないところでもすぐシャワーが使えます。また人工知能搭載のドローンがあれば、いつでも遠隔地から物資が運搬できる。
このシステムは、普段はポップ・ブリクストンのように、地域の街づくりの一環として、「まだきちんとしたお店は持てないけれど、やってみたい」という若い人に使ってもらう。そしていざ震災が起こったら、被災地にドドッと集結させるのです。
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