急拡大する「糖質制限」市場が日本を救う! 3000億円を突破!新市場をこう攻めよ

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糖尿病はもちろん、肥満、高血圧、動脈硬化などメタボリックシンドローム、さらには生活習慣病型のがんやアルツハイマーなど、現代の日本社会で深刻になっている多くの病気が大きく減るでしょう。日本人の四大死因である、がん、心疾患、肺炎、脳血管疾患に対する予防効果も、徐々に明らかになってきつつあります。

そこから、間接的な効果が表れてきます。

まず、医療費の大幅な削減です。糖質制限の導入により、大幅に薬を減らせるのです。『江部康二の糖質制限革命』では、その規模が数兆円のケタに達するという試算を紹介しました。

実際、私が勤務する高雄病院では、糖質制限食の導入により、糖尿病や高血圧の薬が以前の3分の1に激減しました。同じようなことが、ほかの生活習慣病についても言えます。

また、今までは糖尿病になると合併症のリスクが高く、失明や人工透析、足の切断などに至る危険性がありました。なかでも人工透析の患者数は32万人以上になり、関連の合併症も合わせれば「2兆円市場」と言われています。全額が公的負担ですが、3分の1が糖尿病腎症からのものです。糖質制限食を実行していれば、こうした合併症にならずに済む可能性が高くなります。

日本人のライフスタイルも変化する

また、糖質制限食の普及により、日本人のライフスタイルの変化も起こるでしょう。特に高齢者の生活の質が向上します。

糖尿病やその合併症を減らすことができますし、糖質制限により動脈硬化を防げば、脳梗塞や心筋梗塞を予防することになり、身体が不自由になる危険を減らせるわけです。また、認知症やがんを減らせる可能性も徐々に明らかになってきました。

つまり、単に長く生きられるだけでなく、元気でいられる時間が長くなるのです。

不自由な身体で生きている時間と、健康体で生きている時間は違います。同じ長生きをするのなら、健康体でいたいのは当然です。

このことは、社会全体にいい影響を与えるでしょう。

現在の日本は長寿社会とは言いながら、高齢者のかなりの割合が不自由な身体や認知症で苦しまねばなりません。ご本人は活き活きと暮らせませんし、誰かの介護が必要になります。介護する人が労働の機会を奪われるという「機会費用」のマイナスも生じます。

また、超高齢化に伴い年々増え続けている高齢者の医療費は、日本の国家財政を危機的状況に追い込んでいます。厚生労働省の発表によると、平成25年度の国民医療費(税金や保険料、自己負担分の合計)は史上初めて40兆円を超えたそうですが、そのうちの過半である23.1兆円が65歳以上の高齢者に使われているそうです。

これを削減できる財政効果は、非常に大きなものがあるでしょう。

次ページ税収の面からも財政に寄与するはず
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