同じ調査で2011年のプロ野球ファン人口は3685万人で、この5年間で25%減った。さらに10年前、2006年にさかのぼるとファン人口は4138万人。現在まで減少が続いていることがよくわかる。このファン人口は、球場に足を運ぶ観客だけではなく、テレビ観戦や、あるいはニュースで試合結果だけを追う形で球団を応援する人も含む広い意味でのファンを含むものである。
プロ野球の観客動員数は上昇し、その一方でファン人口はどんどん減っている。いったいこれは、何を意味するのか。
観客動員数増と、ファン人口減が示すもの
その答えになりそうなのが、特に熱心な一部のプロ野球ファンの「リピーター化」だ。
プロ野球の各球団は近年、マーケティングの強化を熱心に続けてきた。いまや、本拠地の球場では毎日のようにキャンペーンを行っている。レプリカユニホームやグッズなどを無料で配布し、キャンペーンに併せて選手も特別のユニホームを着るといった取り組みである。そしてファンクラブの充実も進んでいる。グッズや招待券・優待券、ファンイベントへの招待など、会員特典を拡充する動きは、基本的にどの球団でも見られるものだ。
さらに、一人ひとりのファンに合わせて、スマホに小まめに情報を配信するようになっている。たとえば「誕生日」「初めて球場に足を運んで観戦した日」など「記念日」がいつなのかや、あるいは「あなたが観戦した日は何勝何敗」といった細かなデータなどだ。こうしたがっちりとしたマーケティングによって、熱心なファンをさらにヘビーユーザーに変えている。
今のプロ野球の巨大な観客数は、何度も球場に足を運ぶコアなファンの力で成り立っているところが大きい。実際に、あるパ・リーグ球団の関係者からは「シーズンに3回以上足を運ぶファンが年間来場者の大半を占めている」と聞いた。
この球団は、プロ野球の中でもファン数が最も少ない球団の1つといわれているが、この数年で観客動員数を大幅に押し上げた。私も実際に目撃したが、1990年代には駅前でタダ券を大量にバラまいていたのに、球場には閑古鳥が鳴いていたのを覚えている。その後の球団社員の涙ぐましい営業努力と、ネットを駆使した細心のマーケティングで、繰り返し球場に足を運ぶ、コアなファンを積み上げてきた。こうした努力の結果、近年のプロ野球は巨大な観客動員を実現しており、これはこれで評価に値することだとは思う。
しかし、視点を変えてみると、大観衆で沸き、盛況そのものの球場内とはまったく異なる状況が浮かび上がる。皆さんもよくお気づきのことだろう。地上波テレビでのプロ野球中継がほぼなくなり、テレビの前の観衆を根こそぎ失っているのだ。
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