米住宅公社信用不安 火を噴いた本丸、公的資金出動でも茨の道

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 デフォルトの不安が高まれば、米国とドルへの信認低下に発展する事態である。それだけに7月13日の日曜日には、ポールソン財務長官による支援実施の緊急発表、FRB(連邦準備制度理事会)による緊急声明が出された。両社へのFRBによる融資枠を拡大し、必要なら株式の買い取りを行うことも打ち出された。さらにFRBは今後、監督を強化する。融資枠、株式買取りについては額は無制限とされた。

政府による「暗黙の保証」は「明確な保証」に変わりつつあり、米国の格付け機関もAAAをから格下げすることは考えにくい。日本の金融危機の際に、日本の格付け機関が日本国債の格下げをしなかったのと同じことである。したがって、両社の関連債券を保有する投資家は冷静だ。また、GSEに対して公的資金が投入できないようなら、まして、純民間の金融機関の危機に際して、公的資金が投入されることは考えにくい。GSEは最優先課題である。

一方で、すぐに、公的資金が投入されると見る向きは少ない。債務超過であることが確定してなおかつ増資に民間では応じられないといった事柄がはっきりしないと、税金を投入することに対しての批判が強く、議会でなかなか決議できないであろうというわけだ。

しかも、GSE救済の負担は、半端ではない。6兆ドル余りの負債を政府保証にするということは、財政負担の急膨張となる。ただ、日本の金融危機の際に、デフレスパイラルに陥り、公共工事等浮揚策の結果、国の財政赤字が拡大したように、米国の金融危機の深化、実体経済の悪化が進むので、財政赤字の拡大はいずれにしても避けられないだろう。ドル危機のリスクは高まるばかりだ。

邦銀も再び評価損の悪夢、危機は深化

ファニーメイ、フレディマックの機関債・保証RMBSについてみれば、農林中金の5.5兆円、三菱東京UFJ銀行は約3兆円、日本生命も2・6兆円を抱え、信用金庫や信用組合まで幅広く保有しており、今9月期決算での、評価損の拡大が懸念される。

モルガン・スタンレー証券の大橋英敏債券調査部長は「機関債の信用スプレッドは50ベーシスポイントぐらい拡大しており、投資家はドル安、金利上昇でも打たれる」と指摘する。日本の金融機関にとっては、信用低下、金利上昇、ドル安のトリプルパンチによって、評価損が発生する懸念が高まっている。

世界の金融機関にとっても、さらに損失が拡大する方向であり、金融危機は深化するばかりだ。
(大崎明子 =東洋経済オンライン 写真:Fannie Mae's Annual Report)

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