米住宅公社信用不安 火を噴いた本丸、公的資金出動でも茨の道
大いなる誤算というべきか。金融機関の第2四半期の決算発表を前に、米国住宅バブル危機の本丸ともいえるファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の資本不足問題が火を噴いた。
ファニーメイ、フレディマックはジニーメイ(連邦政府抵当金庫)と並び、GSE(Government Sponsored Enterprise、政府支援企業)と呼ばれる。ジニーメイは全額政府出資だが、2社は政府がスポンサーでありながら、民間企業であり上場企業。金融機関から住宅ローン債権を買い取って証券化したり、証券の保証業務を行っている。また、自らも融資を行い、証券化商品に加工販売する。
GSEが保証対象とするのは、基本的に一定基準を満たすプライム(優良な借り手)向け住宅ローンのみ。米国でのRMBS(住宅ローン担保証券)発行残高約12兆ドルのうち、約5兆ドルはGSEによるものだ。RMBSの流通市場の発展に貢献し、米国民に対し住宅の取得を促す効果を上げてきた。そのため、日本の住宅金融公庫もこの2社をお手本として、住宅金融支援機構へ衣替え、住宅ローン融資をやめて民間からの住宅ローンの買取り、保証を行う形に変更されている。
膨張しすぎた2社は住宅バブルの本丸
一方で、ファニーメイとフレディマックは民間上場企業であるがゆえに、収益拡大のインセンティブを持っていた。自らの融資も行うし、しかも、融資額も拡大の一途を辿ってきた。住宅バブルの”戦犯”となっていたわけだ。また、2社は自らの投資も行い、信用力の低いRMBSを積極的に買っていた。その資産膨張振りを懸念する声はかねてからあり、規制を強化し、バランスシートを縮小させるべきだとの提言を米FRB(連邦準備制度理事会)も出し続けてきたのである。
その指摘は正しかったといえる。GSEは投資対象として、問題のサブプライムや「オルトA」と呼ばれる信用力が低いRMBSを保有していたために、他の民間の金融機関同様に、赤字決算に陥った。もともと、資本が薄かったため、昨年のサブプライム問題の勃発以降、財務内容の悪化と資本不足が取り沙汰されていた。
これを受け、昨年暮れから両社は2度の増資を実施。一方では、価格下落の続くRMBS市場を支えるアンカー役として、資本規制の緩和や民間住宅ローンの買い取り枠を拡大する方策を取った。一件あたりの融資金額の大きいジャンボ・ローンを買い取りさせるべきだとの意見さえ出ていた。だが、政府系金融機関の強みを生かして危機のショックアブソーバーとなるはずが、本丸自体が危機を深化させることになったわけだ。
デフォルト回避は至上命題だが、財政負担きつい
両社は保証・発行するRMBSの他に、自らの社債として機関債を発行している。それも合わせると6.8兆ドルぐらいの負債がある。これらは、“暗黙の”米政府保証がついているとされてきた。そのため、世界中の投資家が「信用リスクの上では米国債と同じ」との認識で投資している。各国政府が保有し、投資信託にも組み入れられ、年金や金融機関が幅広く保有している。日本についてみれば、2007年末で、2社を含むGSE発行の機関債を1260億ドル、ABS(資産担保証券)を1030億ドル(GSEの一部住宅ローン以外も含む)。ちなみに、外国では中国が最大の投資家である。