「糖質制限でも痩せない!」にはこう対処せよ 提唱者が指摘!それは「糖質制限もどき」です

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ただし、例外的に気をつけなければいけない場合もあります。以上のような点に注意して糖質制限食を実践していても、ごくまれに、やせないケースがあるからです。

こうしたケースは全体の1割未満で見られ、女性に多いようです。

対策としては、摂取エネルギーを少し減らしてみます。糖質制限食は基本的に、摂取エネルギー量の制限をしていません。でも、基礎代謝が低いためにやせないというケースでは、「糖質制限食+エネルギー制限」という対応が必要になります。

京都府立医科大学の吉田俊秀先生によれば、日本人女性の平均基礎代謝量は約1200キロカロリーですが、個別に見ると600~2400キロカロリー/日と、かなりの差があるそうです。

仮に、基礎代謝量が800キロカロリー/日しかないとすると、1日の消費エネルギーが平均よりも400キロカロリーも少ないことになり、通常の糖質制限食ではやせにくいのも、うなずけます。

そこで、例外的にエネルギーの制限を行うわけです。この場合、女性なら1000~1200キロカロリー/日、男性なら1400~1600キロカロリー/日の摂取を目安にします。

「倹約遺伝子」を持っている可能性

そもそもなぜ、このように基礎代謝量が極めて少ない方がいらっしゃるのでしょうか?

こうした人の場合、「倹約遺伝子」を持っている可能性が考えられます。倹約遺伝子説はまだ仮説なのですが、支持する学者も多いようです。

1995年、アメリカのアリゾナ州に居住するネイティブアメリカンであるピマ族に、β3アドレナリン受容体に関する遺伝子の変異が発見され、この遺伝子の持ち主は基礎代謝が低く、糖尿病や肥満になりやすいことが報告されました。

低いエネルギー量で生存可能となる体質であるわけで、「倹約遺伝子」と呼ぶべきものです。倹約遺伝子は日本人にも比較的多く見られ、脂肪をためやすく、消費しにくい体質となります。倹約遺伝子を持つ場合、通常の糖質制限食だけでなく、エネルギー制限も行って肥満解消を図るように指導する必要があります。

また、やはり例外的なケースとして、つねに“大食い”であるため、肥満を解消できない場合もあります。世の中には、まれにこうした“大食漢”タイプもいるようです。どちらかというと男性に多いようです。

糖質制限食では、基本的にエネルギー制限は必要ないのですが、このようなケースでは、厚生労働省のいう推定エネルギー必要量の食事を指導します。身体活動レベルが低い場合、目安としては、女性で1500~1750キロカロリー/日、男性で1850~2300キロカロリー/日としています。

「正しい糖質制限食」のすすめ

最近、糖質制限食は、糖尿病・ダイエットにとどまらず、ほぼすべての生活習慣病の予防・改善にも効果が期待できることがわかってきました。がんへの予防・改善効果の可能性も指摘され、さまざまな研究が進んでいます。

皆さんも、以上のようなことに留意しつつ、健康的な「正しい糖質制限」を実践されることを、「糖質制限食」創始者として心より願っております。

江部 康二 高雄病院理事長

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えべ こうじ / Koji Ebe

内科医、漢方医。高雄病院理事長、日本糖質制限医療推進協会理事長、江部診療所所長。1950年生まれ。1974年京都大学医学部卒業。1978年から高雄病院に勤務。漢方療法、絶食療法、食養生、心理療法なども取り入れ、独自の臨床活動を行ってきた。1999年高雄病院に糖質制限食を導入し、2001年から本格的に取り組む。2002年に自らも糖尿病であると気づいて以来、さらに研究に力を注ぎ、「糖質制限食」の体系を確立。自身の糖尿病も克服する。

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