成功率低すぎ!日本の不妊治療の残念な実態 60カ国で実施件数最高なのに、出産率は最低

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いったい、なぜそうなってしまうのか。不妊治療に踏み切る前に、ぜひ知っておいてほしいことがいくつかある。

あまり触れられない「顕微授精」のリスク

ひとつは「顕微授精」のリスクだ。

不妊治療に用いられる生殖補助医療技術には、大きく分けて「体外受精」と「顕微授精」がある。

体外受精とは「体外に取り出した卵子に精子をふりかけて、精子の自力で卵子に侵入して受精させるための環境を整え、培養液内で受精させてから子宮に戻す技術」のことをいう。

一方、顕微授精とは「体外に取り出した卵子に顕微鏡をのぞいて極細のガラス針で1匹の精子を人間の手で人為的に穿刺注入して、人工的に授精させてから子宮に戻す技術」である。ここに自然に受精させる体外受精と、人工的な手を必要とする顕微授精には根本的な違いがある。

現在、不妊治療の8割を占めるのは、顕微鏡下で卵子にガラス針を刺して、精子を注入する「顕微授精」と呼ばれているものだ。針を刺すことによって卵子に傷がつくのだが、あくまでも問題はなく、安全だといわれている。しかし、卵子に針で穴を開けるのだ。本当に大丈夫なのかという単純な疑問が頭をよぎる。そこで不妊治療についての参考文献を調べてみると、ある海外のニュースにたどり着いた。

「顕微授精に代表される不妊治療だが、その不妊治療による妊娠で生まれた子は、自然妊娠で生まれた子に比べ、自閉症スペクトラムになるリスクが2倍になる」

このショッキングな記事は、米疾病対策センター(Centers for disease Control and Prevention:CDC)に所管・公表された大規模疫学調査による記事であった。

この調査結果は、1997年から2007年にかけて、カリフォルニア州で出生した590万例の小児に関するデータを基に分析した数字だ。筆者が知るかぎり、この報告に関しては日本ではまったく報道されていない。筆者が調査・取材した日本の不妊クリニックの多くのケースでは、不妊治療に関するリスクの説明はほとんどなされておらず、「顕微授精は安全・安心である」と患者に伝えていたのだ。

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