フェイスブック、エグすぎ「強敵対策」の全貌 今度はカメラでスナップチャットを追い込む

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デジタルオブジェクトの例として挙げられたのが「ポケモンGO」。カメラを通じて映した現実世界の中に、物体やキャラクターが合成されている様子を示す。コンピュータビジョンと機械学習の発達によって、スマートフォンであっても、映っている人の骨格や、コーヒーカップや植物などの物体、そして平面を認識し、静止画だけでなくカメラの生の映像に対しても、デジタルオブジェクトの合成をし続けることができるようになった。

インフォメーションの例は、位置情報と深く連携し、見ているものの解説を見つけたり、レストランで友人のおすすめのメモを見たり、自宅の冷蔵庫で家族が冷蔵庫に貼り付けた付箋を見つけたりすることができるようになる。

ゲームの例として挙げられたのは、テーブルの上にあるコーヒーカップを敵から守るゲーム。実空間と自分のアクションを結びつけて楽しむゲームに期待を寄せていた。

フェイスブックはカメラを用いたARプラットフォームで何ができるかを、開発者に対して説明した。つまり、アプリ開発者やビジネスを展開している人々が、フェイスブックのカメラプラットフォームを用いて、ARコンテンツを作り出すことに期待しているわけだ。スナップチャットは、こうした開発コミュニティとの取り組みを行っていない。

スマートフォンで最も大切なカメラの体験を、モバイルプラットフォーマーではないフェイスブックが拡げようとしている。このことは、アップルやグーグルの戦略にも大きな影響を与えることになるだろう。

重要なことは、ARをフェイスブックがプラットフォーム化したことだ。フェイスブックは、AR作成ツールやカメラのフレームデザインツールを公開し、多くの人々が、ARプラットフォームを活用できるようにした。これによってARを一気にメインストリームに持ち上げようとしているわけだ。

VRの普及はまだまだ

前述のようにフェイスブックはこれまでVRに積極的に取り組んできた。そして、今回のF8でもVRへの言及はあった。VRの新しいサービス「Facebook Spaces」によって、コミュニケーションの新しい楽しみ方を提案したのだ。

アバターを作ってコミュニケーションを楽しむ(筆者撮影)

この新機能を紹介するプレゼンの中で示されたのは、フェイスブックの仮想空間上に自分のアバターを作り、友人2人とともにコミュニケーションを楽しむ、というストーリーだ。

まるで1カ所に集まっているような感覚でコミュニケーションを開始し、フェイスブックに投稿されている360度コンテンツの中で一緒にバーチャルなセルフィ(自撮り)を楽しむことができる。感覚としては、Facebook Messengerのグループにアバターで参加してリアルタイムにコミュニケーションを取る、という感覚に近いだろう。アバターのVRチャットにビデオ通話で参加する様子も紹介していた。

しかし快適なVR体験には、OculusなどのVRゴーグルや3Dマウスの普及が不可欠。スマートフォンだけではまだまだ乗り越えられないテクノロジーの壁が存在している。その点で、ARよりも、もう少し時間がかかる技術としての位置づけとなっていくだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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