フェイスブック、エグすぎ「強敵対策」の全貌 今度はカメラでスナップチャットを追い込む

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フェイスブックは、「カメラをARのプラットフォームにする」とのメッセージを基調講演で強調した。このフレーズから想起されることは、スナップ社に対する強烈な対抗意識だ。3月2日に上場したスナップ社は、「新しいカメラ企業」を標榜する企業だ。

スナップ社は若者向けのSNSとして急成長したSnapchat(スナップチャット)を用いて、デジタルタトゥーが残らないゆるいつながりと即時的かつ刹那的なシェアを武器に、若者層を獲得。米国では、フェイスブックやツイッターより効果的な若者とのコミュニケーションツールと考えられており、企業やメディアもスナップチャットの活用を広げている。

同じく写真やビデオをシェアするSNSであるフェイスブック傘下のInstagram(インスタグラム)は、スナップチャット追撃に対して、素早さを見せる。先頃導入した24時間限定で公開できる「ストーリー」はスナップチャットと同様の機能であり、これにライブ配信を取り入れた。また、本家の「Facebook Messenger」にも、「My Day」という同様の機能を搭載した。

こうした徹底的なスナップチャット対抗策は、成果を上げた。インスタグラムの4億人のデイリーアクティブユーザーのうち2億人がストーリー機能を利用したと発表すると、スナップ社の株価は先週、大幅に下落した。スナップチャットの同様の機能の日間アクティブユーザー数は1億6100万人だったからだ。

今度は「カメラ」でスナップチャットを追い込む

もちろんスナップチャットユーザーのユーザー体験や気持ちの部分はさておき、フェイスブックによるインスタグラムを用いた「スナップチャット対策」は成功している。しかし今回のF8の基調講演で「カメラ」というキーワードを使ったことは、まだまだ、フェイスブックがスナップチャットを追い込んでいく姿勢の表れだ。

その武器になる技術こそがARだ。ARを楽しむためのツールがカメラ、という位置づけになる。

AR体験の具体例について説明するマーク・ザッカーバーグCEO(筆者撮影)

フェイスブックはスマートフォンのカメラを通じたAR体験の例として、「インフォメーション」「デジタルオブジェクト」「エンハンスメント」「ゲーム」を挙げた。

このうち最もわかりやすいのは、エンハンスメントだろう。たとえばカメラの画像に対してフレームを配置したり、顔にお面を付けたり、動物の顔に変えたりする機能だ。フェイスブックはすでにこうした技術を持つマスカレード社を買収している。世界的には、同様のアプリ「スノー」も流行中だ。フェイスブックは、こうしたARエンハンスメントを、写真だけでなく、ビデオやライブ配信にも適用できるように開発を進めている。

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