教育無償化は「働き方改革」にも繋がっていく 教育投資の必要性と財源負担を訴えるべきだ
ここで、兆円単位の財源が必要な大学無償化が実現すると教育にどのような変化が起きるのか、思考実験をしてみよう。
大学の授業料が無償化されれば、おそらく大学進学率が上昇すると予想される。現在の大学進学率は52%(過年度分含む、2016年度)。東京工業大学の矢野眞和・名誉教授は「授業料をタダにしても進学率が100%になることはなく、私の試算では70%近くまで上昇する」とする。
授業料が無償化されれば、社会に出て働いてみてスキルや知識の不足を感じ、学び直しやキャリアアップを考える社会人も入学しやすくなるだろう。授業料が無料なら、家庭を持つ社会人にとり、大学に通うハードルが下がることは容易に想像がつく。
日本は社会人の大学入学が少ない
日本では社会人と大学の関係が実際には希薄だ。グラフのように、大学の学士課程に入学した社会人は、2016年度に約1.6万人。通学と通信の合計で、全体のわずか2.5%にすぎない。ちなみにOECD加盟諸国の平均は16.8%だ。
矢野名誉教授は「国民の世論は、教育は大事だと思っているが、特に高等教育に対する資金配分の優先度が低い」として、日本は「教育劣位社会」であると指摘している。
それを支えるのが「親負担主義」「18歳主義」「卒業主義」という日本の大学に見られる「社会病理3点セット」だ。教育費は本人でなく親が負担し、大学入学は18歳がスタンダード。しかもいったん大学に入れば中退は極力回避され、ほぼ全員が卒業する。
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