テレビが勘違いしている視聴者ニーズの現実

視聴率至上主義、似た番組ばかりで「誰得?」

今の時代に求められている番組作りとは?(撮影:今井康一)

年を追うごとにネットが普及・進化していますが、「全世代対応」「コストの安さ」という2点では、今なおテレビが優位にあるのは間違いありません。ただ、その優位性も、「視聴者のニーズに応えて、信頼を獲得している」という前提があってこそのもの。しかし、今春の番組改編を見ると、残念なことに、各局それぞれに視聴者のニーズとは懸け離れた方針が見られました。

日本テレビは「〇〇〇」、テレビ朝日は「〇〇〇」、TBSは「〇〇〇」、フジテレビは「〇〇〇」。各局が視聴者ニーズから離れる方針として掲げた「〇○○」に当てはまる言葉は何なのでしょうか。

バラエティ偏重で多様性に欠ける日テレ

まずは視聴率トップをひた走る日本テレビから。今春最大の動きは、土曜21時~の「土曜ドラマ」と、22時~の「嵐にしやがれ」を入れ替えたことでしょう。「土曜ドラマ」は40年強の歴史を持ち、「家なき子」「ごくせん」などのヒット作も多く、「子どもと一緒に見られる唯一のドラマ枠」と言われていただけに、遅い時間帯への移動に戸惑いの声も見られます。

これによって日本テレビのゴールデンタイム(19~22時)は、金曜21時~の「金曜ロードSHOW!」を除く全番組がバラエティに統一されました。3時間・3番組立て続けにバラエティを放送し、ドラマも音楽番組も報道番組もありません。

まさに、「1年間を通して安定した視聴率を稼ぐならバラエティがベスト」という考え方であり、確固たる方針そのもの。しかし、月、火、木、日曜は22時~もバラエティが続くなどジャンルの偏りは大きく、バラエティ好きのニーズを重視する一方、それ以外の人には応えようとしていないのです。実際、私の下にも、「似たような番組ばかり」「視聴率稼ぎのバラエティ押し付け」という“アンチ日テレ”のメッセージが多数届いています。

たびたび視聴者から不満の声が上がっているのは、他局の番組をたたくような番組編成。これまでTBSの「金曜ドラマ」1~2話放送日に合わせて、「金曜ロードSHOW!」で『風の谷のナウシカ』『千と千尋の神隠し』などジブリ映画の再放送をぶつけてきました。今春も14日にTBSの「リバース」1話に合わせて、人気アニメ映画『名探偵コナン』を放送。ちなみに、ジブリ映画の再放送は1980年代後半から約30年にわたって行われています。

ライバル企業をたたくのは、ビジネスシーンでは当然のことであり、何の問題もありません。しかし、それが“新商品のリリース”という健全なものではなく、“旧商品の再リリース”という後ろ向きな形で、業界の発展を妨げているとしたら大きな問題。本当の視聴者ニーズを考えたら、「何度も見て、録画もされている」再放送よりも新作を放送するほうが喜ぶ人は多く、「新作を見る機会が失われている」と感じている人々がいるのです。

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