Tモバイルは、なぜ驚異的な成長を遂げたのか キャリアの常識を「壊す」戦略を実施

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アンキャリア戦略は、携帯電話会社の常識や慣例を次々に「顧客のために」壊してきた(筆者撮影)

これらのアンキャリア戦略で打ち出した施策を見ていくと、新規加入をシンプルにし、最新のスマートフォンを手軽に使えるようにし、普段のスマホ活用をより安く、あるいはデータを気にせず使えるようにする、といった分類をすることができる。

新規加入の障壁、中途解約の防止、家族や企業をチャネル化した囲い込み、という巧妙な戦略を、顧客体験によって実現していたのだ。

Tモバイルらしい「顧客体験」とは?

ユーザーの気を引き、時には爽快感すら与えてきたTモバイルのアンキャリア戦略。しかしこうしたPR部分だけで、加入者を倍増以上に伸ばしたわけではない。

Tモバイルはウェブもしくは販売網の店舗での加入を行うことができる。特にウェブは、広告や前述のCEOをはじめとしたSNSアカウントの閲覧者から加入者へと転換させる起爆剤ともなるチャネルだ。

複数の流入口、複数のゴールがあるオムニチャネルソリューションの中で、どのように人が流れ、どのようにして契約に結び付けるのか、あるいは離脱してしまうのか。そうした顧客一人ひとりの動きを、人工知能を用いてモデル化して分析していた。

つまり、アンキャリア戦略は、新しい破壊的なサービスによる顧客体験向上に努めるだけでなく、潜在顧客一人ひとりがキャリアとどう付き合うのかに注目したマーケティングを行ってきたことがわかる。それには、刻々と進む変化への対応スピードにも磨きをかけなければならない。

すでにウェブサイトは、1分で顧客に最適化したコンテンツを公開できる態勢が整っており、ウェブでの注文は485%増加したという。またUberを用いた当日配達では、平均配達時間が23分以下という驚異的な成果を上げている。とにかく顧客に体験を届けるまでの時間が、すべてにおいて短いのだ。

素早い動きの中でも顧客との対話を重視し、体験を作り出す。何より注目すべきは、そのスピードを実現するデジタルカンパニーとしての成長を判断した経営者と、彼についていく組織だ。型破りを戦略にしながら、顧客体験を中心にとらえ、緻密に素早く動く。これがTモバイル急成長のための秘訣だった、と振り返ることができる。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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