世界の朝食を楽しむカフェが人気化する必然 一枚のお皿で楽しみながら異文化を学べる

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マスコミによって一気に知名度が上がった同店だが、そのほか、特に最近客数が増えている大きな理由としてインスタグラムなどのSNSの隆盛がある。料理の盛りつけは、見た目の美しさを追求している。このことが、写真映えが重要な要素となるSNSユーザーには大きな魅力になった。

店のつくりにもこだわっている。入りにくくて不便な店のエントランスは、デザインとしても面白い。非日常感を醸し出しており、「行ってみたい」と思わせるものがあるようだ。

デザイン性は、ほかのアートとのコラボレーションも生み出した。同店のメニューを折り紙で再現しようという試みがある。折り紙をしながら他国の文化について学べるという子ども向けの折り紙キットで、現在のところ発売されているのは、イギリスの朝食バージョン。パンや卵、ベーコン、付け合わせの野菜などを折り紙で作ることができる。折り紙といえば、人工衛星の技術に採用されるなどして、世界的に評価が見直されつつある日本文化の1つであり、注目度も高い。

「私の取り組みがきっかけになったかどうかはわかりませんが、3年前に始めた当初より、モノよりコトや体験、生活を楽しみたいという人が増えていると感じます。これからオリンピックに向けて、もっと外国について知ってほしいし、楽しみながら学んでもらえたらと思っています」(木村氏)

同店ではテーマとなっている国について、朝食を紹介するだけでなく、料理教室や、音楽、伝統工芸などについてのワークショップも開催している。3~4月のテーマ国であるイスラエルについては、4月6日に料理教室が開かれたようだ。5~6月のテーマはスイス。イベント予定はホームページで発表され、メールでの通知を申し込むこともできる。興味がある国の朝食や文化を楽しみに、足を運ぶのもよいのではないだろうか。

外国人による料理教室も予定

今後は、テーマ国にこだわらない異文化コミュニケーションへと展開を広げていく予定だ。具体的には、東京在住の外国人に、店内で料理教室をしてもらうワークショップを多数開催するという。

「いずれは、買い物のついでなどに立ち寄れるような、生活の中で楽しみながら異文化コミュニケーションができる空間もつくりたいと思っています」(木村氏)

料理の味、店の雰囲気、サービスなどについての供給と需要、つまり採算性のバランスは微妙で、計測が難しい。非日常的で、外国に行ったかのような気分になれる同店の魅力を失わずに、うまく舵取りをしていけるかが、今後、展開を広げていくうえでの課題だ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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