なぜ多くの人が「貧困女性」をウソと思うのか 注目連載の舞台裏で起きていること

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高部:これまで19人についてのルポを見返すと、仕事で病気になってしまった方が多いですね。

中村:長時間労働ですよ。長時間労働は本当に壊れるのでまずいです。2012年あたりから、やっと社会問題になりましたが、それまではブラック企業がやり放題だった。メディアも労働者を壊すようなベンチャー経営者を持ち上げる傾向にあったし。低賃金でさらに無償で長時間残業となると、普通に壊れます。壊れたら働けないので、当然に貧困になる。

東京だと最低賃金時給932円、埼玉だと845円。そういうレベルで働くと、だいたい年収は200万円以下。だからダブルワーク、トリプルワークをせざるえない。正規になって年収300万円をもらえば、今度は怒涛のサービス残業で壊れるまで働かされる。限界でしょう。

「残業時間」は業種ごとに定めるべき

山田:そのとおりだと思います。「健康を維持できる1日の労働時間」のガイドラインを職種ごとに定めるべき。ここまでは安全な残業時間、それ以上になると疾患率が高まるのでアウト、という風にしないと多くの人が身体を壊してしまう。

中村:この連載にも数人出てきましたが、女性は介護業界で健康を失うケースが多い。介護は人のために役立つ仕事。国を挙げて介護の社会貢献をあおったから、まじめな女性ほど、介護業界で働こうと考える。女性は男性より、責任感が強い印象がある。我慢して、我慢して限界までやる。

精神疾患までいくと何が起きるか。うんざりするのは、その子どもたちがおかしくなることです。介護保険法が始まって17年経ちますが、母親が介護職でネグレクトされた子どもたちが、いま売春、風俗界隈で顔を出し始めている。露骨な世代格差が明白な中で、恵まれた時代に生きた高齢者の世話を限界を超えてさせられて、現役世代が壊滅する勢いで壊されている。うんざりしますね。

山田:その次の世代、今の10代にさらにマイナスのシワ寄せがきているわけですね。連載2年目も、広がりをみせる貧困問題を見える化し、解決の糸口を提供していきましょう。引き続きよろしくお願いします。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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