大手生保が熱視線、急拡大する「経営者保険」 年率7~8%増、国内で数少ない成長分野

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現在、経営者向け保険市場は日本生命、エヌエヌ生命、大同生命保険の3社がそれぞれ700億~800億円規模、合計でシェア4割程度を分け合っているとみられる(新契約年換算保険料ベース)。その3強体制に、住友生命がエヌエヌと組んで乗り込んだ格好だ。

日本生命も4月に新商品を投入

エヌエヌ-住友生命提携に対し、ライバル生保も黙っていない。最大手の日本生命は、実に4年ぶりとなる中小法人向けの新商品「プラチナフェニックス」の販売を4月に開始した。「退職金準備を念頭に置きながら、死亡保障も準備できる」(三瓶春樹・法人職域教育課長)。

同社の戦略の特徴は、税理士らを中心とした代理店チャネルと、5万人いる営業職員チャネルの2本柱で攻めることができる点。特に代理店は2016年度末で約1.5万店と、5年前と比べて1.4倍に増え、急速に強化している。「経営者向け保険契約件数は2016年度は10数%増、2015年度も7~8%増と、ここ数年連続で伸びている」(三瓶課長)。伸び幅が大きく、まだまだ伸びしろの大きいマーケットのようだ。

また3強の一角・大同生命は、中小・零細企業の経営者に強い影響力を持つ税理士グループ・TKC全国会や各地の税理士協同組合との強いネットワークが強みになっている。約3800人いる営業職員チャネルとの2本柱で営業攻勢をかけている。

同社の今後の柱は、これまで開拓が十分でなかった個人事業主や経営者個人向けの拡大だ。近年ニーズが高まっている就業不能保険商品に注力し、2018年度までに新契約高ベースで4000億円規模(15年度実績は約3300億円)に拡大させる計画を立てる。同社の中尾健治・営業企画課長は「就業不能分野と個人事業主向けの市場を、当社のコアビジネスとしてどこまで定着させられるかが課題」と話す。

全国の中小企業の数は約381万社。好不況の波に大きく左右されるが、個人向け市場と違ってまだ成長は見込める。生保各社による激烈な競争がこれから本格化しそうだ。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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