ライフネット出口氏「僕が会社を辞める理由」 日本一有名な保険会社の会長、ついに引退へ

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写真中央の出口治明会長はこの4月で69歳を迎える。写真右の木庭康宏取締役(37歳)と同左の森亮介取締役(33歳)の年齢は足してほぼ同年齢。若い30代に後を託したいという出口会長のメッセージだ(撮影:今井康一)

今年の6月、生命保険業界でもっとも名を知られた経営者が第一線から退く。

インターネット専業生保、ライフネット生命保険の出口治明会長(68歳)だ。2008年の営業開始時からマーケティング部門を担当してきた中田華寿子常務も同時に退任する。一方、30代の若手2人を新たに取締役に起用し、経営陣の大幅な若返りを図る。

ネットで保険を売るという"壁"

創業から、岩瀬大輔氏とともに二人三脚でライフネット生命を引っ張ってきた出口氏も、ついに退任を迎える(撮影:今井康一)

その出口氏が退任公表後、初めてメディアのインタビューに応じた。

「僕は今年4月で古稀を迎える。古稀になる人間が第一線を退き、これから脂がのっていく30代の2人に託したほうが、この会社楽しみやな、とライフネット生命に加入される方も安心してもらえる」と、”出口節”全開で退任の弁を述べた。

社員140人弱にまで同社を成長させ、2006年の創業、2008年5月の営業開始から10年間走り続けてきた。しかし、昨年秋ごろから、夜遅くや週末に会社に顔を出さず、「時折そのまま帰宅するようになった」という。カリスマ経営者にも老いの影がよぎったのかもしれない。

日本生命出身の出口氏が、岩瀬大輔社長と同社を創業したのは2006年のことだった。当時ネットで生命保険を売るという発想は斬新で、シンプルな商品と大手生保と比べて格段に安い保険料は、金融リテラシーの高い、価格に敏感な消費者の支持を集めた。

退任後の名刺には「創業者」と刷って、次世代の育成やライフネット生命の広報宣伝活動に当たっていく。「しばらくは毎日惰性で会社に来るかもしれない」と笑う出口氏だが、「10人集まればどこへでも出かける」という講演は企業内研修から個人投資家向けセミナーまで年間およそ200~300回。週刊誌に歴史の連載コラムを持ち、著書は共著も含め、20冊を超える。

日本放送協会の中央放送番組審議会や社会保障審議会などの委員を務める異能の経営者の退任は、事業開始10年目で同社が節目を迎えたことも象徴している。

ライフネット生命の経営が順風満帆かというと、そうではない。ネットでシンプルさと安さを打ち出し、当初爆発的な伸びを示した同社だったが、ここ数年は契約が伸び悩んでいる。創業当初の数年間、保有契約件数は面白いように伸びていた。

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