ライフネット出口氏「僕が会社を辞める理由」 日本一有名な保険会社の会長、ついに引退へ

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その結果、商品が複雑になり、理解が難しくなった。商品は高額。販売チャネルが限定され、商品の比較情報が発達しなかった。

国内の生命保険市場の現状をみると、出口氏が創業当初に抱いた問題点はあまり変わっていないように見える。複雑な特約がついて、相変わらず素人には取っつきにくい保険商品。自動車保険や住宅ローンのように、生命保険に限ってはネットの比較サイトはほとんど存在しない。

後継者として30代の2人を指名

森亮介執行役員はゴールドマン・サックス証券を歴て2012年に入社。経営企画を担当し、6月から営業担当の取締役となる(撮影:今井康一)

しかし出口氏は「人口減少でセールスのなり手が減少し、現場の第一線で働いている人たちの危機感は相当強い。世界で一番厳しい銀行窓販規制や、法人代理店をコントロールする構成員契約規制という2つの規制が今後10年、15年でどうなるかが一番のカギ」と指摘する。

ライフネットが登場したこの10年で何が変わり、何が変わらなかったのか。

SBIアクサ生命保険(現アクサダイレクト生命保険)と2社でスタートしたネット生保は10社に増え、安い保険料の商品が出回るようになった。

出口氏は「大きな構造がそう簡単に変わらないということは、ネット生保の市場規模が200~300億円という数字に表れている。しかし、銀行窓販での手数料開示は10年前には考えられなかった。いろんな意味で突破口は開きつつある。40兆円の生保市場の1割がネット経由になるとしても、4兆円。将来、少なくとも数兆円のマーケットにはなる」と楽観的だ。

創業から10年を迎えたライフネット生命。創業者の退任を期に、再び契約数増に弾みをつけることができるのか(撮影:梅谷秀司)

出口氏からバトンを託されるのは、厚生労働省を経て入社した37歳の木庭康宏取締役とゴールドマン・サックス証券出身の33歳、森亮介取締役の2人だ。

「チャネル戦略や商品開発のペースがまだ遅い」(木庭氏)、「子育て世帯への訴求メッセージがローリングできていなかった」(森氏)と意気込む。

「どんな社会でも崩れるときは一瞬で崩れる」。出口氏の予言通り、日本の生保市場が大きく変わる時期はいずれやってくるのだろうか。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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