デフレを克服すれば、日本人は豊かになるか いまの日本は、アメリカや欧州よりもずっとマシ

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自動車業界であっても、組合がベアを要求しないケースが増えてきました。組合も、そんなに給料が上がると思っておらず、その代わりに雇用維持に軸足が置かれているという印象です。働く人の気構えとしては、給料が上がることを望むよりも、いまの給料を維持する、働く場を確保するという感覚のほうが現実的です。

雇用を守り、努力をする企業はもっと評価されるべき

日本で賃金が上がらなかったのは、エネルギー価格の高騰分を企業が製品価格に転嫁しなかったことに加え、賃上げより雇用を守ることを優先したからです。賃金を上げていないにせよ、労働者の雇用を守り、消費者にいいものをより安く提供している企業の経営者には、私は大いに賛同しています。

 アメリカは首を切られた人間と切られない人間で、格差が拡大しています。アメリカの場合はセーフティネットが弱く、失業者になって6カ月くらい経ってしまうと、そのままずっと就職できずに貧困層、あるいは貧困予備軍に転落するケースが多いといわれています。日本は、基本的には全体の雇用を守る。そこがアメリカ企業とは違うところです。

そういった面が全部無視され、経済学者や政治家、あるいはマスコミも、デフレは悪いと言い、デフレスパイラルなどという言葉を使ってきました。日本は唯一デフレで、長期低迷に悩んでいて、他国より生活が悪くなっている。それは明らかに嘘です。むしろ、インフレにすれば、さらに生活は悪化します。

しばらくはデフレのままでいい。それが、私の持論です。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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