その一方、アメリカはリーマンショックのあと、労働者の賃金が大きく下落しています。たとえば、GM(ゼネラルモーターズ)が破綻した翌年に劇的に復活できたのは、新しく採用した人の人件費を、破たん前の4分の1以下に引き下げたからです。医療費や年金など、恒久的にかかるコストを入れると、同社の破綻前の賃金は時給換算で90ドル程度でしたが、破綻後に新たに採用された労働者はわずかに19ドルです。
日本の生活水準は、他の先進国より落ちていない
GMが劇的に復活したことで、他の自動車大手や電機大手なども賃金引き下げを真似るようになりました。いまのアメリカ企業の収益拡大は、労働者の賃金低下によるところが大きいのです。私の仕事を手伝ってくれているアルバイトのスタッフには海外留学を経験している学生が多いのですが、スペインでは、数年前まで貴族のような生活をしていたのに、その日を暮らすのも苦しいという家庭が増えているといいます。若年層の失業率も50%を超えています。スペインほどではないですが、イタリアもポルトガルもしかりです。
米欧で生活している人の話を聞くと、その国の平均賃金では生活が苦しく、日本人は「長期低迷だ」と言いながら、かなりいい生活をしているのだとわかります。日本では「10年前はもうちょっといい生活をしていたような気がする」という人もいますし、「これからはもっと悪くなるのではないか」といった不安を持つ人もいます。 確かに10年前と比べれば名目の賃金は下がっています。ただし、物価が上がっていないので、生活水準は、他の先進国より落ちていないことを認識するべきでしょう。
300円、500円で食事がきちんとできる日本
サラリーマンがランチに500円しか使えないというのも、マスコミが好む話題ですが、むしろ「500円できちんとした食事ができる」というのがデフレのメリットです。
日本と海外の両方で仕事をしている日本人は、日本に帰ってくると300円前後で食べられる牛丼を、本当に安い、日本はいい国だと思うそうです。米欧では、そんな金額ではまともな食事はできません。昔は東京の物価がいちばん高いと言われましたが、それは20年以上前の話です。その後日本では物価が下がり続ける一方、米欧では上がり続けてきたのです。
「ランチ代を500円に抑えている」のではなく、「500円あれば食べられる」のがすごいことであり、これは円高とデフレにおいて企業が努力をしたことで得られる結果なのです。
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