池上彰+佐藤優「最強の歴史学び直し」勉強法 「歴史小説、漫画、教科書、学参」スゴい活用法
佐藤:まず最初に注意すべきなのは、歴史小説や歴史マンガは「歴史を学ぶモチベーション作りの材料」にとどめ、内容そのものは鵜呑みにしないことです。
歴史小説で歴史を学ぶのは危険
佐藤:そもそも歴史小説はあくまでもフィクションですからね。たとえばビジネスパーソンにも愛読者が多い司馬遼太郎の『坂の上の雲』には、明石元二郎陸軍大佐とレーニンが面識があったように書かれています。でも、これは明石の手記に書いてあるだけの話で、公式に証明するものはありません。歴史小説の内容を「史実」と勘違いしていると、大変危険なわけです。
池上:そうですね。興味を持つきっかけにするにはいいかもしれませんが、その場合でも、歴史的事実や専門知識に関しては、鵜呑みにせず裏をとらないといけません。
佐藤:そう思います。歴史の「学習マンガ」には学び直しに使える優れたものもありますが、基本的に創作である歴史小説や歴史マンガは、あくまで「歴史を学ぶモチベーションを高めるための材料」にとどめるべきなんですね。その内容を鵜呑みにしたり、それで「勉強しよう」とか「学び直そう」という安易な発想は捨てるべきです。
池上:では、どうやって勉強すればいいのか。これは私も佐藤さんと同じようにお薦めする方法ですが、「日本史A」「世界史A」の教科書を使うことです。
佐藤:受験を意識した「日本史B」「世界史B」に対して、商業・工業高校など受験を意識しない高校で使われる教科書が「日本史A」「世界史A」です。分量もコンパクトで、社会人に必要な近現代史に比重が置かれているので、歴史の流れと要点がわかりやすく、「社会人の学び直し」には便利だと私も思います。
池上:教養としては古代から学ぶのもいいでしょうが、現代の時事問題、ニュースを理解するのが目的ならば、近代からの流れを知っておけばまず大丈夫ですからね。まずは「日本史A」「世界史A」で基本と大まかな流れを押さえたうえで、あとは自分の興味や必要な分野を深く掘り下げていく方法が、いちばん効率的でしょう。