「いきなり!ステーキ」NY1号店大成功のワケ アメリカ人は「立ち食い」をしないはずが…
不安材料は限りなくあったが、いざ、オープンしてみると、すべてポジティブな方向に運んだ。日本の店舗と同じく、時間によっては行列ができるが、米国の人々も、意外に機嫌よく1時間程度は並ぶらしい。
「並んでも日本の人より大らかな感じがします。その代わり、“早く席を空けなきゃ”と焦ることもないですね。店内の滞在時間は日本が30分なら、ニューヨークは40~45分、1時間になることもあります」(川野氏)
そういえば、米国にはスタンディングバー、つまり「立ち飲み」という文化があった。実は、立ったまま飲んだり食べたりするのは平気な人々だったのだ。
その他のいきステスタイルも、スムーズに受け入れてもらえたそうだ。
「アミューズメントパークのように“その世界観を楽しもう”という感覚で来られている気がします。面白いのが、紙エプロンがすごく受けたこと。そのほか、足元やカウンター下の荷物置きスペースも、米国人には不思議だったようです。“何これ?”という感じで、マスコミにも必ず紹介されます。“これがジャパンホスピタリティです”と説明して、エプロンのひもが結べない人がいたらスタッフが手伝っています」(川野氏)
考えてみれば、日本文化は今、世界的によく知られるようになり、また高く評価されることも多くなった。いきステスタイルが好意的に受け入れられた背景には、そうした風潮もあったのかもしれない。
評価を勝ち取ったのは「質」
日本でのやり方をすべてそのまま、「これがジャパンスタイルだ」と、ニューヨーカーにぶつけたことは、一瀬氏の大きな決断であり、勝負だった。しかしこの勝負に勝てたのは、単に運や世界的な風潮の助けだけによるものではない。最終的に、ニューヨーカーの評価を勝ち取ったのが「質」だったという。
「米国のマスコミは辛口だとさんざん脅かされていました。でも、記者発表後の報道を見ると、非常に好意的な論調だった。うれしかったのが“ユニーク”“サプライズ”だけで終わらず、“本質はクオリティである”と評価されたこと。つまり、味に満足してもらえたということです」(川野氏)
価格設定も的を射ていたのだろう。たとえば日本でもニューヨークでも1番人気だという、ランチのワイルドステーキは20ドルと、日本の1350円よりもやや高めの設定にしている。しかしラーメン1杯「15ドル+チップ」がニューヨークの相場であれば、ステーキの20ドルは手頃に感じられる。価格設定が日本より高めなので、当然ながら客単価も3500円と高め。日に400人の客が来れば、140万円の売り上げとなる。日本では原価率の高さをスタンディング形式にして回転率を上げることでカバーしたが、アメリカではもともと原価率が低いのだという。
「考えてみれば、米国で和食のレストランをやるよりも、米国でステーキ店をやるほうが理にかなっているわけです。つまり、地産地消ですから、原価も低く済む。後はお客が来てくれるか、という問題だけです」(川野氏)
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