「いきなり!ステーキ」NY1号店大成功のワケ アメリカ人は「立ち食い」をしないはずが…
ただし、今でこそ、業態に合わせ立地の幅を広げてきた「いきステ」であるが、スタートの地となった銀座4丁目店をはじめとして、駅から少し離れた場所に展開するのが同チェーンの特徴だ。意識したわけではないというが、結果的に、日本での戦略を踏襲した形になった。
そして、同チェーンの最大の“売り”であるスタンディング形式など、いきステのスタイルがニューヨークで受け入れられるかということは、開店ギリギリまで判断がつかなかった。
3年を要した準備期間には、「立ち食いなど100人中100人がしない」「レアステーキを食べない」「テーブルチェックできないとダメ」など、“ニューヨーク通”や弁護士からさまざまな助言があったという。特に立ち食いスタイルは、オープン前の記者発表でマスコミから最も指摘を受けた点でもあった。川野氏によると、一瀬邦夫社長は「日本人も、もともとは立ち食いをしませんでした」で押し通していたという。
また、米国では普通、「ポンド」「オンス」を用いるため、グラムでの表示を理解してもらえるのかも、大きな心配だった。単位を変えればよいだけなので、それほど重要ではないと傍からは見えるが、いきステスタイルを貫くためには絶対と言っていいほど必要な条件だったのだという。
というのは、食べた肉の量に応じた特典が得られる会員サービス「肉マイレージカード」では、グラム表示を用いているからだ。また、特典以上と言ってもよいほど、ファンの心をつかんでいるのが、食べた肉の量を競う「ランキング」。ニューヨーク店オープンの暁には、これを世界基準にして世界ランキングを行うのが、一瀬氏の構想だったのだ。
「グラムを使うことに関しては私自身、かなり心配していました。ランキングだけ、オンスからグラムに変換できるようにすればいいのじゃないですか、と社長に進言したのですが、“ダメだ。そんなんで伝わるわけない”と一蹴されました」(川野氏)
懸案事項だった「チップ」を廃止
また、チップをどうするかも、最後まで決断が揺らいでいた一件だった。
「最初は“慣習だから”とチップ制を決定していましたが、最後の最後に、やはりノーチップで行こうと決断をしました。メニューがすでにできていたので、作り直さなければなりませんでした」(川野氏)
ちなみに、ニューヨークでは数年前から、日系の企業をはじめとする「チップ廃止」の動きがある。米国大戸屋も、2016年3月にニューヨークの3店舗においてチップを廃している。同店の決断も、大戸屋の動きを受けてのことだったようだ。
「日本ブランドとして知られる和牛をあえて使わなかったのも、大きな決断でした。日本でさえ高いのに、米国まで持っていくと1グラム30セントと、米国産牛肉の3倍以上の値段になってしまいますので」(川野氏)
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