トランプ政権の実行力を議論しても無意味だ マーケットの目はすでに米国の実体経済へ

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経済に明るい兆しが出ているのは、日本も同様だ。3月31日(金)発表の統計では、2月の失業率が前月より0.2%低下して2.8%となり、このところ破れなかった「3%の壁」を突き抜けた。3%を下回るのは、1994年12月以来であり、2.8%という水準は同年6月以来となる。つまり、今世紀初の3%割れだ(ちょっと表現を盛り過ぎだが)。

また同じ日に発表された2月の鉱工業生産は前月比2.0%増と堅調で、経済産業省によれば、輸出増が下支え要因となっている。この背景としては、世界的な景気の持ち直しにより、日本製品に対する海外需要が回復していることが挙げられる。

日本の企業収益については、少し先になるが、4月下旬から5月上旬にかけて発表される、3月本決算企業の2016年度収益実績も予想を上回ることで、株式市場の好材料になると期待される。

やっぱり日本株にも春が来る?

世間では、まだまだ寒の戻りがあるものの、少しずつ気温が高い日が混じり始め、桜の満開もすぐそこだ。昔、”Spring has come.” を「バネを持ってこい」と訳したという、私の恩師の持ちネタはさておき、春は木の芽や動物がバネのようにぼよんと飛び出し、明るい躍動感が広がる季節だ。

咲いた桜におびき寄せられるのは、われわれ日本人の花見客だけでもないし、海外からの観光客だけでもない。海外投資家は、桜にかかわらず、気候の良い春と秋には、観光がてらに日本企業の取材のため来日することが多い(これは冗談ではない。ただ、取材と観光のどちらが主なのか、定かでない投資家もいるが笑)。

日本の株式市況全般については、一部の外国人投資家の間に警戒も広がっている。海外勢は大型株のバスケットや先物などを見ると、足元では買い越しというよりは、売り越しがちだ。しかし個別企業の来日取材を通じて、小型株を発掘しようとの物色意欲は旺盛だ。最近小型株が、相対的に大型株に対して株価が優位に推移しているのは、そうした海外勢の小型株買いもあると推察している(米国で、NYダウに対して、ナスダックが相対的に堅調であることと、相似形だ)。

週末かつ月末で年度末の3月31日(金)の日本株は下落で終了したが、これは、国内機関投資家の決算対策売りだと言われている。確かにこれはやや予想外であり、日経平均株価は1万9000円を割り込んで引けた。しかし4月からこうした売りはなくなると考えていいわけで、その分、需給面で株価の上値が軽くなる展開も期待できるだろう。

今はこうした春めいた明るい流れの中にいると位置づけ、今週の日経平均株価は、大きな上昇こそないものの、1万8850~19300円で推移すると見込む。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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