トランプ政権の実行力を議論しても無意味だ マーケットの目はすでに米国の実体経済へ

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これは通常の政権の2月下旬より、はるかに遅い。このことは、トランプ氏が選挙に勝つために経済政策について数値を適当に述べたので、後になって実現可能性のあるものに落とし込むため、かなりの時間を要していることを示している。そうした検討の過程で、大統領自身が現実の財政の状況などに妥協し、いくばくか経済政策の規模を削る可能性があるわけだ。

だが、5月と見込まれる「予算教書第2弾」の公表においては、逆に大統領が意地を張って、公約に近い形で、減税策もインフラ投資案も突っ張り通す展開もありうる。

しかしその場合、やはり議会共和党との政策のすり合わせが必要なはずだが、財政赤字の膨張を望まない議会との溝は広くて深い。今秋に議会で予算審議が本格化すると、トランプ大統領が掲げた経済政策は、かなりの縮小を余儀なくされるだろう。公約で掲げた経済政策は、どうせ大幅に小さいものになってしまうと見込むので、現時点で政策効果を議論しても、無駄だと考えられる。

市場の眼は政策から米国経済の実体へ

したがって、トランプ政権の動向は、無視するのがよいだろう。政策はいつどう変わるかわからない。専門家が米政権の政策を巡って右往左往するなら、専門家に勝手にさせておこう。

ただ、トランプ大統領も、さすがに毎日失望の種を投下できるわけではない。市場が騒ぐ「政策失望」も、目先のネタとしては一巡した感がある。そのため、幸いなことに、市場の眼は経済実態に向かっているようだ。

先週はまず、3月28日(火)に、米国株価が上振れした。これは、同日発表の消費者信頼感指数の改善を好感したものだという。また30日(木)の米国株価や米ドルの上昇は、昨年10~12月期のGDP(国内総生産)統計の上方修正によるものだ。

これから目先のことを考えても、今週の米国では、週末の4月7日(金)発表の「真打ち」である雇用統計(3月分)や、ISM(米サプライマネジメント協会発表の業況判断指数(製造業・非製造業とも))、民間のADP社が発表する雇用統計など、毎月恒例のこととはいえ市場が注目する経済統計が多い。このため、市場の関心が、一段と実体経済に向かいやすい。 

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