米ウエスチングハウスが破産法適用を申請 東芝の今期純損失は1兆円超の可能性
[東京 29日 ロイター] - 東芝<6502.T>は29日、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)が米連邦破産法11条の適用を申請したと発表した。負債総額は98億1100万ドル。泥沼の損失拡大の原因となったWHを切り離すことで、経営の立て直しを急ぐ。
会見した綱川智社長は「原子力の海外事業はほぼ撤退と言え、リスクはなくなった」と述べ、経営再建に自信を示した。
破産法11条は再建型破綻処理の手法で、日本の民事再生法に相当する。WHは米国2カ所で建設中の原発4基のコストが想定を大幅に超過したことで経営難に陥っていた。
WHは東芝の実質的な支配から外れるため、2016年度通期決算から連結対象でなくなる。
WHは事業継続のために、8億ドルのDIPファイナンス(事業再生融資)を確保、東芝はそのうち2億ドルを上限として債務保証する。米国2カ所で建設中の原発については、電力会社との間で作業継続を目指して協議を進める。
再生手続きの開始により、東芝は親会社保証関連の損失や貸倒引当金を計上。この結果、2016年度の最終赤字は前回予想の3900億円から1兆0100億円に膨らみ、同年度末の債務超過額は6200億円(前回予想1500億円)に悪化する可能性がある。
1兆0100億円の最終赤字は、日立製作所<6501.T>が2009年3月期に計上した7873億円を上回り、国内製造業では過去最大となる。
債権者である米電力会社が訴訟に踏み切れば、損失がさらに拡大する懸念もある。これについて綱川社長は「電力会社とは良好な関係であり、そのようなことはない」と懸念を強く否定。同席した畠澤守常務も、これ以上の追加損失はないとの認識を示した。
WHにはカザフスタン共和国の国営企業カザトムプロム社も10%出資しており、東芝に買い取りを請求できる権利(プットオプション)を保有している。権利行使された場合は1000億円弱程度の株主資本減少要因となるが、公表数値には織り込み済みという。
東芝は海外原子力事業で発生する損失を、稼ぎ頭のメモリー事業売却で穴埋めする計画。関係者によると、きょう入札手続きを締め切った。綱川社長は応札状況について、債務超過の解消に「十分に耐えるものが来ている」と述べた。
東芝をここまで追い込んだWH買収は果たして正しかったのか。綱川社長は「結果を見て振り返ると、非常に問題のある判断だった」と語った。
(志田義寧 浜田健太郎 編集:内田慎一)
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