東芝の広報担当「公募」は妥当な策だったのか メディアコントロールは本当に難しい

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2月14日に決算と原子力事業について会見した東芝経営陣(撮影:風間 仁一郎)

解体の危機に瀕している東芝が、1月半ばから2月中旬にかけて転職情報サイト「DODA(デューダ)」に掲載していた求人情報がSNSなどで炎上ぎみの話題になった。

すでにこの求人情報は掲載を打ち切っているが、募集していたのは広報担当者。年収は600万~1100万円。「危機発生時等はメディアコントロールを担当していただきます」などという条件が記載されていたようだ。

東芝の歴史の中でこれまで以上の危機はない

まずびっくりしたのは、この時期に広報担当者を公募していたということである。東芝ほどの大企業に、すでに広報担当者は複数人いるだろう。その担当者がメディアコントロールできているかどうか、僕は東芝の人間ではないので詳細はわからない。できているのかもしれないし、できていないのかもしれない。

それでも募集したということは、今、広報部門の人数が足りないか、辞める可能性があって補充が必要、もしくは、能力不足と感じているからだろう。確かに今の東芝に「優秀な広報担当者」は必要だ。

PRコンサルタントである僕のところにも日々、いろいろな会社から「広報が欲しいから紹介してほしい」「プロが欲しい」という相談が舞い込む。「あそこの広報が優秀だ」と推薦することがほとんどだ。年収もそれなりに高い。

一方、公募の市場で優秀な人材はなかなか集まらないというのが実感だ。フリーランスを雇うならわかる。プロの広報マンはいくらでもいる。とはいえ、今どきどんな企業でも、優秀な人材は、ヘッドハンティングしている。広報業界も同じだ。

広報市場は今、売り手市場である。優秀であればいくらでも仕事がある。報酬も上がり続けている。

東芝の歴史の中でこれまで以上の危機はない。「危機発生時のメディアコントロール」と明記されているが今が最大の危機だ。「新生東芝」と書いているということは未来があるということなのかもしれないが。

それにしてもこれ以上の危機があるとすればそれは、倒産を意味する。だが、倒産してしまったらメディアコントロールは必要ない。会見をひらいて、あとは管財人に任せるしかない。

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