日本はなぜ「結核中蔓延国」から脱せないのか

大阪あいりん地区は南アと同じ結核罹患率

このような歴史から、多くの日本人の間では、結核は過去の病気と思われがちです。

かくいう私も、社会人になるまではそう思っていました。しかし、世界では、年間180万人が結核によって命を落としていて、再興感染症として位置づけられています。

また、国内に目を向けてみると、多くの先進国では結核低蔓延国の基準である、人口10万人あたりに結核を発症する割合である結核罹患率10を下回っていますが(アメリカ2.8、ドイツ5.4など)、日本は14.4と、先進国の中で最下位、結核の中蔓延国とされているのです。これは、アメリカの1970年頃の水準ともいわれ、毎年約1万8000人が新たに結核を発症、年間約2000人が今も結核によって命を落としています。

日本は結核中蔓延国

また、結核の地域格差は大きく、人口10万人あたり最も結核を発症する人の割合が高い大阪府(23.5)は、最も割合が低い山形県(7.3)の約3.2倍です。なかでも、冒頭のあいりん地区では、南アフリカと同程度(550)、スワジランド(440)よりも結核患者数が多いという統計もあるほどです。

日本は、1975年に結核高蔓延国から中蔓延国になり、その後40年間近く、中蔓延国を脱せずにいます。それはなぜなのか。

まず1つは、高齢化です。最近では、結核患者の約7割が60歳以上です。これらの年齢層の人々の多くは、かつて結核が蔓延していた時期に結核に感染し、加齢に伴う免疫力の低下などが原因で、今、結核を発症していると考えられています。

次に、都市化です。若い世代の間では、不特定多数の人が利用するネットカフェやパチンコ店などでの感染が多く、40代以上では建設現場やサウナなどでの集団感染が目立ちます。このような場合、自分が感染したことに気づかず、感染の広がりが大きくなることも少なくありません。

そして3点目が、社会的弱者の存在です。ホームレスや日雇い労働者たちは、人口の流動が多いシェルターなどの人口密集地帯で寝泊まりし、日々食いつなぐという生活のため、免疫力が低い人がほとんどです。これに、アルコールや薬物依存など複雑な問題を抱える人も少なくありません。また、今後、日本も外国人労働者や2020年の東京オリンピックに向けて外国人が増えていくことを考えると、海外から結核菌が持ち込まれる可能性も高まります。

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