必要なのは、critical thinking
――中国でも地震が起きればボランティアが殺到したり、テレビで困っている人が報じられると、寄付金がすぐに集まったりしますよね。
段:それは確かにそう。でも私が言いたいのは、システマチックなサポートと意識が必要だということ。欧米ではたくさんの人が中国にやってきて、孤児を養子に迎えます。でもそれは中国人にとっては摩訶不思議なことです。私たちには国を超えたオープンな考え方が必要ですが、それにはまだまだ時間がかかるでしょう。
過去10年、私たちはみな、一生懸命「成功」してきました。そして最近は、「よい生活とはなにか」が議論されるようになってきた。「単に、車を買い、家を持てばいいというものではない」とも言われます。では、「よい生活」とは何か。答えはありません。
私たちは日々の暮らしに慣れてしまうと、現状が当たり前だと思うようになります。けれど、それに甘んじてはいけないと思う。今、私たちに必要なものは、「critical thinking」です。
周:たとえば、砂ボコリなんかもそうよね。このテーブル、砂でジャリジャリになっているでしょ。中国にいると慣れっこになってしまうけれど、実のところ、これにも慣れちゃいけないのよね。
――慣れないとやっていけないんですが……。
段:慣れちゃだめよ! critical thinking! でもそれは不平不満を言うこととは違うわ。海外帰りの中国人はよく、中国の現状について文句を言うでしょ。私もそうだった。「みんな、ところかまわず、つば吐きまくってるし!」なんて言っていたわ。でも今は、それよりも、自分に何ができるかを考えたいと思っています。
周:そうそう。不平不満はネガティブなもの。そうでなくて、今ある問題に、自分自身の考えをもって、建設的な意見を出していかなきゃということね。
段:それは働き方についても同じね。仕事は生活の大部分を占めるのだから、働き方もライフスタイルでは重要な要素です。
香港で「good lab」、上海で「新単位」という「co-working space」のコンセプトがあって、私はこうした新しい働き方に注目しているの。特にグローバルなビジネスの世界では、何も机に向かって仕事をしなくてもいいと思う。もちろん会議をしたり集まったりする場所は必要だけど、私はもっと自由な仕事空間を追求しています。
私のオフィスがあるこの場所は「NIWOTATA你我他她(あなた私彼彼女)」というのだけれど、ここは北京で最初のオープンスタイルのイノベーションユニットオフィスです。提供するのはただのスペースだけでなく、そこにはデザイナー、投資家、記者といった人々のつながりも含まれます。私はこの小さなスペースで、私が信じるコミュニティ文化を実践しているの。それが「niwotata future hub」の目的です。
結局、「生活の質」というのは、人と人のコミュニケーションの質によって決まると思う。欧米にはカクテルパーティというコミュニケーションの場があるでしょう。それは「How are you? What is your name?」と言って始まるオープンなコミュニケーションの習慣であり、また一種のカルチャーです。
中国人にも「会所(クラブハウス)」という交流の場があります。でも中国のエリートたちは、その閉鎖的空間にとどまり、より多くのさまざまな人々と交わることを好みません。これはとても興味深い現象だけれど、クリエイターにとって、閉鎖空間は「死」を意味します。
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