段:ちょうど今、今年11月から来年5月まで上海で開催する「上海芸術設計大展(Design Shanghai)」というイベントの企画にかかわっているところなの。海外のデザインウイークやデザイン博覧会は、東京やロンドンで10年以上、ミラノでは50年以上も続いているのに、中国はまだ始まったところです。
2011年に開催された「北京国際設計周(Beijing Design Week)」に参加して以来ずっと、商業文化が発達した上海で、アートとデザインを合わせたソーシャル型の展覧会をやりたいと思っていました。だからこのプロジェクトにすごく期待しているの。
「Beijing Design Week」が開催された当時は、「デザインウイーク」なんて「何それ?」という感じでした。でも今はリスペクトされるようになった。こうした変化の速さは、中国の大事にすべきよいところだと思う。ただ方向性は重要で、それが間違っていようが正しかろうが、あっという間に発展してしまうのも中国です。
「Design Shanghai」では、ビジネスパートナー探しと企画の一部を担当しています。私自身、メディア人であり、起業したてのいわゆる「文化企業家」です。クリエイティビティというのは、ブランドとビジネス価値を最大限には向上させると信じています。だから今回の展覧会が、そんなクリエイティビティを試す場になることを願っています。
――たとえばどんなふうに?
段:今、話を進めているイタリアのアーティストが言っていたのは、「人の情感と都市との間に関係性を生むような作品にしたい」ということ。私たちが持つ都市の片隅の記憶というのは、人の情感と関係します。たとえば上海の街角を歩いていて、おばあさんの笑顔が印象に残った場所があったとする。それをネットにアップすれば、個人的な街の情感の記憶を、多く人がシェアすることができます。
そんなふうにネットの技術とニューメディアのデザインを通じて、今はやりのアプリ「City Map」を作っていきます。でもそれは、レストランやショップの情報マップではなく、情感を共有する都市マップです。展覧会ではこうしたテクノロジーとアートの融合、現実とネット世界が共鳴するデザインを実現しつつ、さらにそれを場外の企画にもつなげていきたいと考えています。
それだけでなく、北欧のインクルーシブデザインのような、高齢者や身体障害者にやさしい工業デザインも展覧会に取り込んでいきたいと考えています。中国ではこの分野はまだ少なく、そもそもあまり意識されていません。
今年、日本で原研哉氏がディレクションする「HOUSE VISION」の展覧会を見たのですが、そこでたくさんヒントを得ました。歩行が不便な高齢者をアシストするホンダのロボットを見て、こうしたハイテクにはとても細やかな気遣いがあると思いました。そんなものも、上海での展覧会に取り込んでいきたいです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら