具体的に、私が外資系企業在職中、人材育成部門リーダーだった時にこのテクニックをどう活用したかをご紹介します。
当時社員たちの研修の受講率が非常に低い状況にありました。部門メンバーとどうしたらもっと受講率が上がるか検討したのですが、ありきたりで、しかも効果がなさそうな案ばかり。それに業を煮やして、「研修というものの前提を壊してみよう」とメンバーに問いかけたのです。
次の表のように、企業研修として当たり前の事実を洗い出し、それを覆すとどんなことができるかを話し合ってみました。
たとえば「eラーニングは1人で好きな時間に学習できるから忙しい社員でも継続できる」という前提を覆すと「受講時間を決めてみんなで頑張るeラーニング」というアイデアがでてきました。
実際にこのアイデアを元にチャット機能をつけて実施してみたところ、非常に盛り上がりました。テレビ番組を見ながらネットで実況中継するようなイメージです。“いつでも好きな時間に“受講できるというと、一見とてもよいと思われがちですが、実際は「いつでもできるから今出なくても……」と実は後回しにされがちなのです。いつでもできるからいいという前提を壊し、あえて時間を固定にすることで、通常だと50%を切ってしまうような講座の受講率が90%近くまではね上がったのです。
技術的にできるかどうか
また一見無理そうなアイデアでも、ここ数年の技術の進化によって、今ならもっと簡単にできるものもあります。
例を挙げると、10年以上前ですが、「セカンドライフ」というアバターで仮想空間にログインして、世界中の社員が集まって研修をしようという試みがありました。当時は非常にサーバーに負荷がかかるため実用には至りませんでしたが、今のテクノロジーならできないことではないでしょう。
このように技術的にできるかどうかということも、検討すべき前提のひとつです。これは技術革新によってどんどん壊されて行く前提ですので、数年おきに、今できることをチェックしておくとよいでしょう。
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