きちんと検討範囲をとらえ、しっかりと深めて考えたにもかかわらず、「イマイチ」「ありきたり」とバッサリ切られてしまう場合には、物事を見る角度が一定のため、ひらめきや目新しさがなかったり、本質的な解決にいたっていないということになります。惜しいところまでは来ているものの今一歩という状況です。これはさまざまな「角度」から対象を見て考えることが不足しているということになります。
このように思考とは、幅と深さと角度という本来時間がかかる3つの要素をおさえなくてはならないのです。つまり、この3つを速く考えられる型を知っているかどうかで、思考のスピードが変わってきます。
幅広く、深く、シャープに考えるには、ロジカルシンキング(論理思考)のツールを使うと良いでしょう。ヌケモレなく全体をとらえるMECEという考え方や、フレームワークなど論点を提供するものを使うことで幅を確保します。また、思考停止にならず考えを深めるための仮説思考も、思考停止を防ぐために有効です。
物事を見る角度を変えて、ひらめきの確率を上げるためにはラテラルシンキング(水平思考)が有効です。ロジカルシンキングはさまざまな前提に基づき、考えを広げたり、深める考え方ですが、ラテラルシンキングは、その前提を疑って考えたり、思考の枠の外に視点を移動するなど発想の確率を上げていく思考法です。よいアイデアを出すというと、センスや経験がものを言うと思われがちですが、実はこの“視点移動”をどれだけできるかがものを言うのです。
私はコンサルタントとして駆け出しの頃、先輩や上司に、会議中にものすごい速さで矢継ぎ早に質問され、「パッと見ただけなのに、よくそんなにいろいろな視点が思いつくものだ。きっと経験が違うんだな」と思っていましたが、次第にこれは経験だけではなく、思考の型を知っているかどうかの違いだということがわかってきました。この型を知っていれば、たとえ自分にとって初めてのテーマであっても、いろいろと思考を素早くめぐらすことができるのです。
このように論理思考に水平思考を足して使いこなすことが、思考の質・量と速さを両立することになります。論理思考は、かつてはコンサルタントのお家芸のような位置づけのものだったかもしれませんが、今や多くの職種で活用されるようになってきたと思います。
それでは、物事を見る「角度を素早く変える」視点移動の思考法である水平思考のテクニックについていくつかご紹介します。
前提を疑ってみる「それを変えるとどうなる?」
まずひとつ目は「前提を疑う」というテクニックです。「前提」とは何かというと、絶対的に変えられないものだけでなく、実はいろいろなものが混じっています。
図にあるように、人間としての基本原則や法制度など変えられないものから、「こうあるべき」という文化風土、特定の人の意見、もしくは誰が言ったかさえはっきりしない伝聞の場合や、単に自分がそう思い込んでいるものまで、さまざまなものが前提になりがちなものです。下に行けば行くほど、覆しにくい前提になりますが、もし覆った場合には、革新的で効果の大きい策が生まれてきます。
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