渋澤:そもそもユーロという共通通貨が誕生したのは、ドイツとフランスという大陸欧州2大国の政治的な思惑による部分もありますからね。これでフランスが離脱ということになれば、ドイツ経済にも少なからぬ影響が及ぶでしょう。
藤野:いや、もしユーロが解体されて、またかつての自国通貨単位が復活でもしたら、すさまじいマルク高になるでしょう。それは、自動車などの輸出を活発に行っているドイツにとっては、望ましくない。ドイツにとって、ユーロの解体だけは絶対に避けたいところだと思います。
渋澤:ユーロ体制が揺らげば、最初の反動はユーロ安となって表れるでしょう。しかし仮にユーロが解体されなかったとしても、ドイツの通貨高を連想して、その後はおそらくものすごいユーロ高になるのではないでしょうか。仮にフランスがユーロから離脱すれば、その後を追って、イタリアやスペイン、ポルトガルなどの南欧諸国も、ユーロから離脱するでしょう。つまり、ユーロ構成国の中でも、弱い国がどんどん抜けていくから、結局、ユーロにとどまっている国は、ドイツをはじめとした経済的に強い国ばかりになります。最終的にはユーロのマルク化というか、とにかくユーロが非常に強い通貨になるでしょう。
「ユーロ崩壊」は現実的ではない
中野:でも、仮にユーロの仕組みがなくなったら、大変なことになるのではないでしょうか。だって、多くのユーロ加盟国が、ユーロ建てで国債などを発行しているわけですよね。もし、それがユーロ導入前の通貨単位に戻るとしたら、おそらくデフォルト要件にヒットするのではないでしょうか。たとえば今、ユーロ建てでフランス国債を発行しているのに、それが償還される前に、フランスがユーロから離脱してフランを復活させたら、その時点でユーロ建てのフランス国債は弱い通貨に変更されることになるとすると、やはりデフォルト扱いになるはずです。こうなると、欧州大陸の債券マーケットは、大混乱に陥ります。
渋澤:確かに、そう考えるとユーロからの離脱、ユーロ崩壊は現実的ではないように思えますね。
中野:そもそも、ユーロが崩壊するなんてシナリオ自体、まったく想定されていませんからね。仮にフレグジットが現実のものになったときのインパクトは、ブレグジットどころの騒ぎではありませんよ。
藤野:まあ、とはいえルペン候補がフランス大統領選挙で勝利する可能性は、かなり低いでしょう。
中野:そうですね。でも、私はフランス大統領選挙の行方については、まだ心配していますよ。ブレグジットにしてもトランプ大統領にしても、「よもや、まさか」ということが現実になりましたからね。フランス大統領選挙の行方は、やはり気掛かりです。でも、今回のフランス大統領選挙で、ルペンさんが大統領にならなければ、ドイツの選挙でメルケル首相が後を追われるようなことにはならないでしょう。
渋澤:なんだか、いろいろな方向に話が飛んでしまいましたが、さまざまな角度から考えても、為替動向の基本は円高ではなく、円安に向かうということですね。
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