韓国の星、サムスングループ「解体」の行き先 司令塔の未来戦略室消え、問われる財閥経営

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未来戦略室に所属する社員は、コントロールタワーらしく、グループの主要人材で構成されていた。グループナンバー2だった崔室長(グループ副会長)など首脳9人がこぞって退陣した後をどう埋めるのかという課題も出てきた。

これにはまず、グループ内では最も独自的な存在であるサムスン電子側の人間が、グループ内での中枢的な役割を果たすようになるだろう。代表的な経営者が、サムスン電子の権五鉉(クォオ・オヒョン)副会長だ。崔副会長の辞任後、権副会長はサムスン内の全企業を見渡しながら、李副会長とともに二人三脚で副会長の職責を担う役員として浮上した。

サムスン電子がグループの司令塔役割に

取締役会議長でもある権副会長は崔副会長からバトンを受け継ぎ、ナンバー2としての役割を果たしつつ、自ずとリーダー不在による空白を埋めることができる人物だとされている。実際にサムスン電子は3月3日、権副会長の直属組織として「グローバル品質革新室」を新設し、サムスン重工業の金鍾鎬(キム・ジョンホ)社長を室長に据えた。金社長はサムスン電子出身だ。サムスンSDIも2月28日の取締役会で、サムスン電子メモリー事業部長の全永鉉(チョン・ヨンヒョン)氏を社長に内定した。

サムスンの別の主軸であるサムスン物産とサムスン生命の最高経営者にとっても役割が拡大しそうだ。サムスン物産は崔治勳(チェ・チフン)氏が、サムスン生命は金彰洙(キム・チャンス)氏が、それぞれ社長となっている。この二人を中心としてサムスンはグループ会社別に代表取締役と取締役会中心の自律経営体制へ本格的に転換するものと思われる。

これまでのサムスンの経営が、オーナー→未来戦略室→グループ各社という垂直的な体制だったとすれば、今後は透明性を追求するグループ各社の取締役会を中心に、水平的な体制へと変わりそうだ。オーナーがあれこれ仕切ってきた韓国的財閥経営が、根本的に変化するきっかけとなるかが、注目される理由である。

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