経営危機の東芝、再建へ向け「運命の3週間」 まずは3月14日に無事、決算を発表できるか

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ここに来て急浮上しているのが、WHへのチャプターイレブン(C11)申請の可能性だ。

米連邦破産法11条、通称チャプターイレブン(C11)は日本の民事再生法に相当する。2009年の米ゼネラル・モーターズのようにC11を通じて再建を果たした米大手企業は少なくない。WHにC11を適用できれば、東芝の負担を減らせるのではないかと社内外の声はあった。しかし、東芝がWHの債務に対し7934億円(2016年3月末時点)もの保証を行っている。さらに電力会社などから東芝が損害賠償請求を受ける恐れもあるとして、これまでC11は現実的な選択肢にはなってこなかった。

政治がウエスチングハウスのC11を後押し?

だが、3月10日には閣議後の記者会見で、麻生太郎財務相がWHに関して「C11を早めに決めないと(東芝は)決算を出しにくい。今月中に決定しないといかん」と発言。世耕弘成経済産業相も「(東芝が)WHのC11検討はまったく承知していない」としつつ、「C11は事業再生の観点から行われており、立ち直って成長している企業はあまたある」と言及するなど、政治も含めて既定路線化しているかのようだ。

原子力子会社、米ウエスチングハウス本社(記者撮影)

WHが米国で進める4基の原発建設のコスト超過(損失)約7000億円を決算に取り込む結果、東芝は2016年12月末で債務超過に陥った(独立監査人のレビューなしの仮決算ベース)。損失がこれ以上拡大しなければ、C11の意味はない。

しかし、米国はインフラ建設ラッシュによる労働者不足で、原発以外の大型工事も遅れが深刻化している。さらに工期が遅れれば、建設費がもう一段拡大しかねない。その上、原発を運転する電力会社が予定していた税制優遇を受けられなくなり、損害賠償を受ける恐れもある。WHは破綻処理を得意とする弁護士と契約したと報道されている。このままWHが工事を続けた場合とC11を適用した場合の損得勘定を慎重に検討している。

この1週間を乗り越えれば、次のハードルは3月30日に予定されている臨時株主総会となる。ここで半導体メモリ事業の分社化について3分の2以上の株主の賛成を得る必要がある。分社して生まれる「東芝メモリ」の企業価値は2兆円とも目される。

債務超過が解消、今後の巨額のキャッシュアウトに備えるために、東芝は売却によって1.5~2兆円を得ることを想定している。逆に言えば、売却が成功しなければ、東芝の再建シナリオは根底から覆る。

ここから3月末までの3週間が東芝の運命を左右すると言っても過言ではない。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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