アスクル、倉庫大規模火災から学ぶべき教訓 鎮火から10日、初の会見でも出火原因は不明
同社の今2017年5月期の業績予想は売上高3480億円、純利益55億円。「(火災によって)今期は最終赤字か」との質問に、岩田社長は「倉庫内に立ち入りができておらず業績への影響は未確定」と明言を避けたものの、損失額が鎮火前に想定された「全損」よりは、少なく済む可能性を示唆した(なお、損失は計上後、保険収入で一定部分が相殺される見込み)。そのうえで、岩田社長は「機関決定ではない」と断りながらも、周辺住民からの励ましの言葉をもらったことなどを明らかにし、同地で物流倉庫を復旧させる意思をにじませた。
LOHACOの厳しい状況
一方、個人向け通販のLOHACO(ロハコ)に関しては、今回の火災で大きな痛手を負っていることが改めて明らかになった。
同社の売上高の大半は法人向け通販であり、2012年にスタートしたLOHACO事業は急速に伸びてはいるもののまだ480億円(見込み)にすぎない。営業損益はなお「創業赤字状態」だ。
それでも火災による影響が大きかったのはLOHACO事業だった。
法人向け通販に占める埼玉物流センターのシェアは9%にすぎず、他の6つの物流センターでカバーすることで、ほぼ通常通り営業を行っている。
それに対し、LOHACOの埼玉物流センターのシェアは62%に上る。そのため、約3万点にのぼるLOHACOの独自商品のうち、横浜や大阪の物流センターからの出荷でカバーできるのは約8000に過ぎず、東日本地域ではなお注文できない商品が多くを占めているのが現状だ。
アスクルでは3〜9月までに3つの比較的小規模な代替の物流センターを構築、横浜センターの法人向け通販物流を一部移管するなどしながら、9月末までにLOHACO物流の完全復活を目指すとした。だが、その間に顧客が他のネット通販に流れる懸念もある。
会見では肝心の物流センターの出火原因や、なぜ延焼が防げなかったかについては、なお消防の調査中であることを理由に明らかにされなかった。
特定はされていないが、今回の火災は、フォークリフトによって廃棄用段ボールをトラックに積み込もうとした際、タイヤが段ボールのうえで空回りして、煙が出たことが出火原因になったともいわれている。それでもなぜ出火後、防火シャッターやスプリンクラーが結果として機能しなかったのかなど、多くの疑問は残されたままだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら