ヨーロッパは「結婚制度に縛られない社会」だ 「充実したパートナーシップ」こそが重要

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このような、家制度に根差した「結婚」制度に対する抵抗として、最近は、事実婚を選ぶカップルが増えている。事実婚は、戸籍を移動させず、住民票の続柄で「夫」「妻」と明記し、「事実上結婚している状態」にすることを指す。昨シーズンで人気を博したドラマ、『逃げるは恥だが役に立つ』で行われた方法だ。

2005年の内閣府による『国民生活白書』では、「婚姻届を出さないでカップルで生活するようになった理由」についての調査結果が公開されている。男性の結果をみると、「戸籍制度に反対」が70.7%、「夫婦別姓を通すため」が64.0%、「相手の非婚の生き方の尊重」が63.3%となっている。対して女性は、「夫婦別姓を通すため」が89.3%、「戸籍制度に反対」が86.8%、「性関係はプライベートなことなので国に届ける必要を感じない」が70.8%となっている。また、女性の62.1%が、「夫は仕事、妻は家事という性別役割分担から解放されやすい」ことも理由に挙げている。

昔のように、男性が働き女性が家を守る、という社会ではなくなったのだから、夫婦のあり方が変わっていくのも当然だ。個人主義が進む日本で、パートナーと対等でいたい、「家」という枠に縛られたくない、と考えるのは、当たり前の欲求だろう。

だが「結婚」という手続きを踏めば、伝統的な家制度に組み込まれてしまう。事実婚を選ぶ理由を踏まえると、「結婚」という制度自体が、現代の社会と適合していないように思える。

ヨーロッパの「結婚に縛られない社会」

日本とは違う結婚の価値観として、筆者が住んでいるドイツの例を紹介したい。ドイツには日本のような戸籍がないので、「家族」の枠は絶対的なものではない。パートナーを恋人だと思うのなら、10年以上一緒に暮らしても「彼氏」と紹介すればいいし、正式に結婚をしていなくとも家族だと思うのなら、「妻」と紹介すればいい。筆者はパートナーと2年半同棲しているのだが、日本の友人には、よく結婚について聞かれる。だが、ドイツでは聞かれたことがない。他人が結婚しているかどうかなんてことに、興味を持つ人はあまりいないのだ。

ドイツでは、恋愛のゴールは必ずしも「結婚」ではないし、結婚しなければ家族になれない、とも考えない。事実婚の社会的認知が進んでいるうえ、結婚や離婚の手続きが面倒なことから、籍を入れない人も多い。そのため、「結婚すべき」というプレッシャーはないし、「結婚できない人には問題がある」という考えにもならない。「結婚」はあくまで当人の自由な意思に基づくものであり、パートナーシップは多様である、という理解が進んでいる。

だがそれは、大昔からそうであったわけではない。時代の変遷とともに、事実婚や同姓カップルの権利を保障し、1993年に夫婦別姓を認め、社会に適応してきたのだ。

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