ヨーロッパは「結婚制度に縛られない社会」だ 「充実したパートナーシップ」こそが重要

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現在、ドイツだけでなく、多くのヨーロッパの国では、「結婚したければすればいいし、したくないのならしなくていい」という認識が進んでいる。パートナーシップのあり方はさまざまなのだから、「結婚」を目的として、他人やメディアが大げさに騒ぐことはない。権利を求める国民の声を聞き、制度を見直し、対応してきた。そういった歴史があって、「結婚に縛られない社会」になったのだ。

「なぜ結婚しないのか」とあおるよりも重要なこと

日本は、本質的な制度改革をするよりも、制度からはみ出す原因を批判する傾向があるように思える。長時間労働で心身を病んだ場合、労働環境の劣悪さよりも「当人の弱さ」を批判する人は少なくないし、就職留年が取りざたされたとき、新卒採用制度の賛否よりも、「内定をとれない学生の問題点」や「不況」が注目された。

大声で「結婚離れが進んでいる」と叫ぶ人は多いが、「結婚制度を見直そう」ではなく、「なぜ結婚しないのか」「結婚できない人には何が足りないのか」という話になってしまう。

「結婚制度に適合すべき」「結婚できないのが悪い」とあおるよりは、「どうすれば多くの人が充実したパートナーシップを結べるのか」「どうしたら多くの人が結婚したいと思える制度になるのか」を考えるべきではないだろうか。「結婚離れは問題だ」というのなら、結婚制度を魅力的なものにする努力をすればいい。

「経済的理由で結婚できない」と指摘するのなら、「なぜカネがないと結婚できないのか」「カネがなくても結婚するためにはどうすべきか」を考えるべきだ。個人的な信条はさておき、夫婦別姓を望む人がいるのなら、夫婦別姓を認めればいい。

結婚という制度を嫌って結婚しない人や、結婚に至らない人を批判しても、結婚する人が増えるわけではない。結婚という制度をどうやって魅力的なものにするか、結婚以外にはどんな選択肢があるべきなのかを考えるほうが、よっぽど重要で、有意義なはずだ。

結婚していない人、できない人を結婚制度に適合させるのではなく、結婚制度を現代社会に適合させることで、自らの家族を持つことに積極的になる人が増えるのではないだろうか。

雨宮 紫苑 フリーライター

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あまみや しおん / Shion Amamiya

1991年、神奈川県生まれ。立教大学在学中にドイツで1年間の交換留学を経験。大学卒業後再び渡独。ワーキングホリデーを経て現地の大学へ入学し、現在フリーライターとして活動中。日独比較や外から見た日本など、海外在住者の視点で多数の記事を寄稿している。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。

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