藤野:インデックスファンドが成り立つ条件ってありますよね。つまり、現状維持ではなく成長しようとしている企業がしのぎを削るマーケットがあるということです。
そして、その様子を見て儲けようとする投資家がいて、そこからつねに成長性の高い企業を選別しようとしていること。この2点だと思います。こういう状況下であれば、インデックス運用がアクティブ運用に勝ちやすい。ただ、日本の場合はそうした激しい戦い方をするような企業経営者がいないし、投資家はアクティブ運用を好まないですから、きちんとしたアクティブ運用を行えば、インデックスに勝てる余地は十分にあるはずです。
中野:確かに、インデックス運用は合理的なのですが、個別のインデックスファンドは単なるパーツに過ぎません。複数のパーツを集めてポートフォリオを構築して初めて資産運用になるのであって、たとえば東証株価指数に連動するインデックスファンドを単品で保有しているだけなら、それは資産運用とは呼べず、言うなれば、ネジ1本を持っているだけにすぎないのです。
結局、インデックスファンドは価格しか見ていない
渋澤:インデックスファンドで運用することのワクワク感がどこにあるのかを考えてみると、それは「インデックスが値上がりすること」の1点に尽きます。でも、企業には価値をつくり続けるために働いている社員が大勢います。彼らの成果や努力にもフォーカスを当てるのは、とても大事なことです。それこそがアクティブ運用の醍醐味だと思います。
中野:まあ、多くのインデックスファンド支持者にとって、企業価値の重要性は二の次、という感じでしょう。ちなみにインデックスファンドを考案したジョン・ボーグル博士は、日々の値動きを追いかける短期的投機の道具になるということで、ETFには反対でした。
渋澤:確かに、価格が上昇すれば乗り遅れないようにと思って飛びつき、価格が下落すればやばいと思って飛び降りる。その繰り返しになると、長期的な視点で運用するどころか、目先の値動きに振り回されることになりますからね。結局、ETFをはじめとしてインデックスファンドは、価値を見ずに価格だけを見ているわけで、投機家と言われても仕方がないと思います。
中野:特に証券業界は、積立NISAなんかやりたくないのが本音なのではないでしょうか。積立NISAで買える商品はインデックスファンドで十分などとの声が業界側からあるとすれば、まじめにこの仕組みに取り組もうと考えていない何よりの証拠でしょう。ということで、私には積立NISAが業界の嫌われ者になる様子が目に浮かびます。とにかく、システムを構築するのに莫大な資金が必要なのに、そこから得られる手数料収入は既存NISAと比較して明らかに減るでしょうから。
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