藤野:私、「利確」(利益確定)という言葉が本当に嫌いなんですね。利確できる投資家がいちばん賢いという風潮が昨今、非常に強まっています。たとえば、小売業にセリアという会社があります。この会社の株価って私が投資を開始した時期と比較すると今は20倍以上にもなったのですが、利確至上主義の投資家は、おそらくここまで持ちきれなかったでしょう。
ひょっとしたら株価が2倍になったところで利確しているかもしれない。でも、そういう投資家は、20倍超のリターンを享受することはできないのです。それはNISAも同じで、最近、NISAで積立投資をしている投資家が、トランプラリーの影響で基準価額が上昇したのを見て、どんどん利確のために解約しています。
NISAの5年期限ルールはあるものの、これは、NISAの基本概念と照らし合わせてみてもどうなのかなぁ思いますね。それで、どうして利確をしたがるのかを考えてみたのですが、日本人って現金がホームポジションだと思っているからではないでしょうか。何に投資をしていたとしても、最終的には現金に換えて持つという意識が強いから、株式でも長期投資ができず、ちょっと値上がりしただけで「利確売り」をしてしまうような気がします。
金融庁の長期投資への姿勢は評価
渋澤:なるほど。確かに、日本では「現金」が好きで、本当の意味での「資産」という存在を理解していないのかもしれません。多くの日本人は「お金持ち」になることを好むけれども、資産を形成して「資産家」になることの意味がわからないのかもしれない。
中野:まあ、でも積立NISAで20年の非課税期間を獲得できたのは、ひとえに金融庁の成果でしょう。当初は非課税期間10年と言われていましたが、いろいろな経緯があって、最終的に金融庁が20年でねじ込んだ。それだけ金融庁自身も、長期投資に力を入れている証拠だと思います。
投資対象についても、一部ではインデックスファンドのみなどと言われていますが、決してそのようなことはないと思いますよ。いずれにしても、制度実施まであと9カ月程度。さまざまな調整が行われるなかで、積立NISAの本当の姿が、徐々に表れてくるでしょう。
ただ、積立NISAが長期的な資産形成を支えるためのものだとしたら、やはりインデックスファンドしか認めないのはおかしな話です。特に日本はこの20年間、ほとんど経済が成長していません。それなのに、日本株インデックスファンドで長期投資をすればリターンが得られるなどというのは、まったく合理性を欠く論拠です。やはり、長期的に生き残っていける企業を発掘して投資するのが、日本における株式投資の王道であり、そのためにはアクティブファンドが活躍する余地を、もっと広げていく必要があると思います。
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