“鶴の一声”で前進、排出権取引の実現へ…環境省、経済産業省が妥協したウラ


排出権は長期的に2倍まで上がる?

資本市場周辺では「2050年にCO2を半減させると長期目標がある以上、規制はそれまで厳しくなる。ならば、排出権の値段は理論的には2倍まで上がるだろう」(エコノミスト)といった期待が形成されている。この状況下で産業界が“マネーゲーム”による混乱を警戒するのも無理はない。

では、なぜここに来て経産省と産業界は、試行的実施とはいえ国内版排出権取引実現へ歩み寄りを見せているのか。

実は経産省は長期エネルギー需給見通しの中でセクター別アプローチで積み上げた結果、「20年までに05年比14%減の温室効果ガス削減は十分可能。これはドイツの中期目標と同水準」との試算を出している。1990年比では4%減(CO2に限れば3%減)にすぎず、微々たる削減に見えるのだが、20年における国別の削減目標の基準年を05年としたEUに間尺を合わせれば、一応筋は通っている。

産業界に“免罪符” 削減義務は緩め

問題は部門別の削減想定だ。この「90年比4%減」を部門別に見ると、90年からジワジワと排出が増えてきた業務部門(オフィス、商業施設)、家庭部門、運輸部門(主に自動車)で大きく減らすことになっており、電力や鉄鋼に代表される産業界の負担は相対的に軽い想定だ。つまり、20年までは産業界が与えられるキャップは緩めでそれほど厳しくない、ということ。排出比率が高いはずの産業界は“免罪符”をもらったようなものであり、
厳しい削減義務を免れる。

さらに家庭部門の排出を削減するため、政府は太陽光発電普及のための補助金復活、省エネ商品への買い換え促進のための予算措置を検討中で、産業界、特に電機メーカーにとってはビジネスチャンスが膨らむ。

ムチが緩くてアメが甘いとあれば“実験”に乗るのも無理はない。とはいえ、これからヒートアップするポスト京都交渉でさらに厳しい削減目標が課されるようなことがあれば、本格導入を前に産業界は再びそっぽを向くのかもしれない。


(週刊東洋経済)
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