イエレン議長の試練はトランプ政権の圧力だ 雇用を増やすのは「強いドル」か「弱いドル」か

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「みんなが考えるよりもずっと即興的だよ」。これは、1990年に米『プレイボーイ』誌のインタビューで「取引を決めるためのマスタープランがあるのか、全部即興で決めるのか」と問われたトランプ氏の回答である。現在の議会共和党がFRBに対して抱く印象もまったく同じだ。FRBの即興をやめさせなければ。

「ルール」に沿うことを迫る議会共和党

議会共和党が金融規制緩和の土台とするFinancial CHOICE(Creating Hope and Opportunity for Investors, Consumers and Entrepreneurs)Actには、金融政策に関する2つの規定が盛り込まれている。FRBは、自身の判断に基づいて金融政策ルールを策定し、金融政策を運営すること。そして、実際の金融政策が「参照政策ルール」と異なる場合には、その理由を説明することである。

標準的参照ルールとは、「政策金利=2+0.5×GDPギャップ+0.5×インフレギャップ」という式で示されるテイラー・ルールを指す。議会共和党は、ルールベースの金融政策運営を義務づけることによって、「近年のFRBによる即興的アプローチと比べてより強固な経済成長基盤をもたらす」としている。FOMCにとって悩ましいのは、テイラー・ルールに従えば、急激な利上げを迫られる点である。

イエレン議長は議会共和党の動きを牽制。1月19日の講演では、「FOMCでは定例的にさまざまなシンプルな金融政策ルールによる検討を行っている」と述べたうえで、「実質均衡金利はテイラー・ルールが前提とする2%とは限らない。経済に生じたショックの持続性、バランスシート政策や財政政策の効果、ゼロ金利制約の存在などが考慮できない」――とルールを用いる場合の課題などを列挙した。

金融政策は決して即興などではなく、多くのインプットと専門的知識を必要とする。当たり前のことを丁寧に説き続け、高まる「政治的圧力」に耐えることが、イエレン議長の今年最大の仕事とすらいえそうだ。

小野 亮 みずほリサーチ&テクノロジーズ プリンシパル

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おの まこと / Makoto Ono

1990年東京大学工学部卒、富士総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社。1998年10月から2003年2月までニューヨーク事務所駐在。帰国後、経済調査部。2008年4月から市場調査部で米国経済・金融政策を担当後、欧米経済・金融総括。2021年4月より調査部プリンシパル。FRB(米国連邦準備制度理事会)ウォッチャーとして知られる。

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