イエレン議長の試練はトランプ政権の圧力だ 雇用を増やすのは「強いドル」か「弱いドル」か

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3月利上げの条件として重視されているのは、国内経済の好調さと海外リスクの後退である。国内経済の好調さに関する当局者の判断は、「選挙後、企業のアニマルスピリッツが解き放たれた」というダドリー・ニューヨーク連邦準備銀行総裁の発言(2月28日)が象徴している。

海外リスクの後退については、イエレン議長講演の2日前、「最も利上げに慎重なFOMC参加者」であるブレイナードFRB理事が明確に語っている。ブレイナード理事の講演は「米国経済は転換期にある」という一節から始まった。

ブレイナード理事によれば、2014年から2016年にかけて、米国経済は、4つの外部要因によって成長を妨げられ、FOMCにとって利上げの障害になった。第1は中国や欧州など主要な海外経済の顕著な弱さ。第2は内外金融政策の違いに対するドル相場の高い感応度。第3は原油価格の大幅な下落。そして第4は、こうした下振れリスクに対する金融市場参加者の極度の反応である。

以上に挙げたような逆風は過ぎ去ったとして、ブレイナード理事は「現状、外部環境は、より落ち着いている。米国に対する海外発の短期的リスクは後退したようだ」と述べたのである。そして米国経済に目を転じても、雇用、賃金、物価、消費、設備投資、リスクスプレッド、株価など、さまざまな点においてプラス方向への「転換点」にあるとの評価を示した。

利上げは「海外次第」という脆弱さ

海外リスクの後退については、すでに前回FOMCの議事録(2月22日公表)の中で、スタッフ見通しとして示されていた。しかしFOMC参加者でそれに同意したのは「数名」にとどまっていたのである。前回FOMCから議事録公表までの3週間で、海外リスクの後退という見方がFOMC参加者全体に広がったと見てよいだろう。

2月中旬に行われたイエレン議長の議会証言の原稿には、海外リスクの後退という見方は記述されていない。イエレン議長は、1月中旬の講演でも使われた「利上げを待ちすぎるのは賢明ではない」との言葉を繰り返しただけであった。利上げという「王手」に向かうFOMCの指し手を市場参加者が予期しえなかったとしても、当然であろう。

海外リスクの後退という評価は、海外次第という脆弱さの裏返しでもある。欧州で相次ぐ選挙は結果次第ではユーロ売り・ドル高を惹起し、FOMCの利上げを邪魔しよう。また忘れてはならないのは、米国内にも利上げに対する障害があることだ。トランプ政権と連邦議会による金融政策への干渉である。

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